【12月4日 AFP】環境活動家の張正祥(Zhang Zhengxiang)氏(74)は、目がよく見えず、困窮した生活を送っている。だが、中国で最も汚染されている湖の一つ、滇池(てんち、Lake Dian)周辺の多数の企業と対決し、汚水を垂れ流す工場を閉鎖に追い込んできた。

 滇池は、雲南(Yunnan)省の省都、昆明(Kunming)西南に位置する国内最大級の淡水湖だ。張氏は、この広大な湖の保護活動に人生を費やし、周辺地域の企業に環境汚染防止を促す一方で、廃水を湖に流す企業を当局に告発してきた。

「子どもの頃は湖の底まで見えていました。喉が渇けば湖の水を飲み、水を料理にも使いました」と張氏は振り返る。

「その水が有毒になりました。飲めないし、使えない。触ることさえできません」

 張氏の活動はリスクを伴う。中国では、草の根の社会運動は政府によって弾圧される。環境活動家やその弁護士が報復を受け、時には収監されることもあった。

 週に数回、張氏は赤土の岸辺をパトロールする。汚染源がないか双眼鏡でチェックし、小型のコンパクトカメラで写真も撮る。

 滇池には農業、工業、鉱業の汚水や人の排せつ物が何十年も流され、環境破壊が起きている。

 中国政府は滇池を保護するために500億元(約9000億円)以上をつぎ込み、水処理施設を多数設置し、川を引き込んで新鮮な水を供給してきた。

 それでも、湖面は今も濁り、緑藻類で覆われている。

■「湖を守るのは自分の務め」

 張氏は湖畔の村で生まれ、滇池で取れた魚と周囲の森の果実を食べながら、ずっと湖の恩恵を受けて生きてきた。

 5歳の時、父親が亡くなり、その後間もなく母親が家を出た。残された張氏と2人の弟たちは自力で生きなければならなかった。

 弟たちは、中国の大飢饉(ききん)時代に亡くなった。張氏は天涯孤独となり、自然の中で暮らし始めた。生き延びるために自然の食料を手に入れるすべを身に付けた。

「この湖は生きています。でも、この問題で自ら声を上げることはできません。湖を守るのが私の務めです」とAFPに語った。「(湖は)私にとって2人目の母なのです」