【11月30日 東方新報】他社のメーカーが作った商品にブランド名を与えるだけで利益を得る。そんな「無本万利(コストゼロで巨万の利益)」の商法が中国で広まっている。商品に品牌(ブランド)の名前を貼るだけの「貼牌」ビジネスと呼ばれている。

 その代表的企業が「南極電商(Nanjids.com)だ。1990年代に誕生した下着メーカーで、保温性のある下着製品で知られていた。今世紀に入りベビー用品や衣類なども製造していたが、2008年から工場や販売店を持たず、ブランドのライセンス供与だけを行うビジネスに転換。オンラインショップのサイトで同社のブランド「南極人」の商品はカーテン、寝具、洗濯機、湯沸かし器、おもちゃ、マッサージチェア、紳士服、子ども服、小型家電、食品など無数にあり、「すべての商品が南極人になる」とすら言われている。2020年に南極電商の売上高は41億7200万元(約744億2389万円)、純利益は11億8800万元(約212億円)に達した。

 ライセンス供与を仲介するコンサルタント会社の責任者は「南極人のブランド認可料は4000元(約7万1360円)で、さらにブランド名の入ったタグ代がジャケットなら1枚1.8元(約32円)、ズボンは1.7元(約30円)というように値段が決まっている」と説明する。

「医薬界の南極人」と言われるのが仁和集団(Renhe Group)だ。メインの製薬以外に化粧品や健康食品、消毒・衛生用品などを展開しており、他社が作った製品に「仁和」のブランドを供与している。調理家電大手の九陽(Joyoung)も同様に「貼牌」をしている。

 無名の小規模メーカーからすると、ゼロから自社ブランドを立ち上げて広告も打ちながら他社と競争するより、有名ブランドを名乗った方が安定した売り上げが見込め、経営リスクが低くなる。まさに「名より実を取る」商法だ。もちろんブランドのライセンスを供与する企業も、労せずして利益を手に入れることができる。

 中国おもちゃ・ベビー用品協会が4月に発表したリポートによると、2020年のライセンス供与商品の売上高は1106億元(約1兆9729億円)に達し、商品ジャンルは年々多様化しているという。一方で、ライセンスを供与したおもちゃやベビーカー、子ども靴などに注意事項や説明書が添付されてなかったり、重金属の含有量が多すぎたりするなどの問題が起きている。「南極人」の製品も各地の消費者協会から何度もブラックリストに上げられ、南極電商の今年上半期の純利益は純利益は前年同期比42.8ポイント減の2億4600万元(約43億8837万円)に落ち込んだ。

 北京星竹法律事務所の郝旭東(Hao Xudong)弁護士は「貼牌ビジネスは違法ではないものの、市場の混乱を招いている。ブランドを供与する企業は製品の品質を維持する責任があり、契約するメーカーを慎重に選択する必要がある」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News