【12月16日 AFP】犬への愛情でつながるアルバニア人とセルビア人の男性が、コソボで野良犬を保護するシェルターを共同で運営している。紛争から20年以上たっても今なお民族間に深い溝があるこの国で、アルバニア系住民とセルビア系住民が協力し合うケースはまれだ。

 コソボでは、アルバニア系住民とセルビア系住民の互いに対する不信感は根強い。共通語はなく、民族間の緊張が表面化しやすい。

 それでも、プリシュティナ・ドッグシェルター(Pristina Dog Shelter)を設立したアルバニア人のメントル・ホッジャ(Mentor Hoxha)さん(55)と相棒のセルビア人のスラビサ・ストヤノビッチ(Slavisa Stojanovic)さん(57)が対立することはない。

 2人は、自分たちのシェルターで約40匹の犬を保護している。シェルターがあるグラチャニツァ(Gracanica)は首都プリシュティナ近郊に位置し、セルビア人が多く住んでいる町だ。

 ホッジャさんはAFPに、「私たちは犬への愛情でつながっているのです」と語った。

 2010年にシェルターの共同運営を始めてから、1000匹以上の野良犬を保護してきた。

 野良犬は通常、ワクチン接種と不妊・去勢手術を受けさせた後、再び路上に返す。子犬や弱っている犬は引き続きシェルターで世話をし、年間約80匹を西欧諸国の里親に譲渡している。

 欧州南東部にあるコソボは経済的に貧しく、動物シェルターの数は非常に少ない。この20年以上、野良犬はこの国で悩みの種になってきた。

 野良犬が増えたのは1990年代後半。セルビア治安部隊とアルバニア系ゲリラ組織による戦闘が激化してからだ。やむなく避難した飼い主に捨てられた犬が路上にあふれた。

 対処に迫られたコソボ当局は、野良犬を殺処分した人に賞金を提供。この対策は激しい非難を招き、フランス人女優のブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)さんにも糾弾され、打ち切られた。

 2017年に子どもが野良犬に襲われる事例が相次ぐと、政府は野良犬を不妊・去勢する4か年計画を打ち出し、130万ユーロ(約1億7000万円)を拠出した。

 だが、推定1万匹がまだ手術を受けておらず、野良犬はあまり減っていない。交差点付近や公園など、あちこちに野良犬がいる。