【12月2日 People’s Daily】中国貴州省(Guizhou)の梵浄山(Fanjingshan)国家級自然保護区管理局にある監視センターで、赤外線カメラの防火システムが反応し、大型スクリーンにいくつもの光が点滅した。

「火事ではなく、『お宝』ですよ」。管理局の雷孝平(Lei Xiaoping)副局長は満面の笑みを浮かべる。希少動物のキンシコウの集団が監視エリアで活動していると分かったからだ。

 貴州省銅仁市(Tongren)に位置する梵浄山は、中央アジア熱帯孤島山岳生態系と顕著な生物多様性を保持している。2018年には世界遺産に登録され、梵浄山風景区は観光地として最高ランクの国家5A級に指定されている。

 梵浄山には約7000種の動植物が生息し、「動植物のDNA倉庫」ともいわれる。この自然生態系を保護するため、銅仁市は2018年に保護条例を制定した。

 雷副局長は「広大な保護区の動植物を守るため、管理局は100人以上の管理・保護チームを編成し、赤外線カメラや監視ビデオを設置し、生態調査や森林火災防止、伐採・密猟対策を一体的に行っています」と説明する。

 梵浄山のふもとにある寨沙侗寨は、かつては典型的な貧しい山村で、2010年の1人当たり純収入は2000元(約3万5580円)に満たなかった。地元政府はエコツーリズムを通じて生態系の保護や地域の経済発展を図る道を選んだ。

 保護区の重要エリアで暮らす住民を移住させると同時に試験エリアで農村観光を展開し、地元の人々の収入増につなげた。2011年以降、観光資源を生かして民宿やレストランを整備し、文化イベントを行い、観光地として発展してきた。

 世界遺産登録以降、梵浄山はさらに有名となり、世界中の観光客を魅了するようになった。古民家を民泊用に改修した寨沙侗寨の村民、夏用発(Xia Yongfa)さんは「多くの観光客が梵浄山から下山して村に泊まり、田舎料理を食べ、少数民族トン族伝統のたき火の集いを楽しんでいます。休日は半月前から予約が必要ですよ」と話す。開業から1年で収入は数十万元となった。

 寨沙侗寨の成功例は、周辺の村々のモデルとなった。梵浄山風景区周辺では1200人以上の村民がレストランや民宿、アトラクションなどの観光サービスに従事し、波及効果により1万人以上に増収をもたらしている。

 エコツーリズムに加え、特産品の生産も富をもたらしている。銅仁市は古くから茶の産地として知られる。2017年5月、貴茶集団が銅仁市江口県(Jiangkou)に生産加工拠点を築き、わずか数年で国内有数の抹茶生産企業に成長した。抹茶のコーヒーやケーキ、麺、洗顔クリームなどが国内だけでなく10か国・地域に輸出されている。

 梵浄山の森林被覆率は非常に高く、数百種類の質の良い食用キノコが生育している。銅仁市はキクラゲやシイタケなどの5種類を中心に食用キノコの産業チェーンを形成しており、今年上半期だけで生産規模は5億5800万本、22億600万元(約392億4400万円)に達している。

 銅仁市は茶、油茶、食用キノコ、鶏卵、漢方薬などを中心としたグリーン産業を構築しており、梵浄山周辺の住民の生活はますます豊かになっている。(c)People’s Daily/AFPBB News