■大量生産キノコに押されて

 パリの地下墓地「カタコンブ(Catacombs)」の不気味なトンネルも、今でこそ人気の高い観光名所だが、かつてはキノコの栽培床で埋め尽くされていた。

 だが急速な都市化、とりわけパリの地下鉄工事によって、1900年代初期にキノコ生産者は首都から追い出され始めた。それでも1970年代には、まだ約50人がパリ郊外地下の採石場跡で栽培を続けていた。多くの場合、代々家族で受け継いでいた。

 しかし、やがてオランダやポーランド、さらに中国などで大量生産された安い輸入キノコが出回るようになり、フランスの生産者は音を上げた。外国のキノコは生産率を上げるため、石灰の代わりにピート(泥炭)を使っていた。

 パリ南郊のランジス(Rungis)卸売市場によると現在、フランス全体のマッシュルームの年間生産量9万トンのうちパリ産はほんのわずかだという。

 当局によるとフランスの「AOP(原産地保護呼称)」制度の下、「パリのキノコ」という呼称で認証を受けるには遅すぎるという。すでに何十年もの間、一般的にそう呼ばれてきたからだ。

 つまり、本当に採石場で栽培されたマッシュルームを買っている消費者にそうだと分かってもらうことは、生産者にとって宣伝上の大きな課題だ。

「ここでは自然にキノコが育ちます。水をスプレーして成長を促したりはしません。水っぽくなりますから」とバンさんは言った。大きな栽培場でコンピューター管理によって育てられたキノコとは違うと胸を張った。

 映像は11月15日撮影。(c)AFP/Joseph Schmid