■「連中に追い出された」

 コース中央の村には、住人の去った家が残り、「この場所は国有地です」と書かれた看板が立っている。しかしアブドゥル・ラティフ(Abdul Latif)さん(36)は、4人の子どもと一緒に、当面は村にとどまっている。立ち退き料をまだ受け取っていないからだ。ラティフさんは「今のここは暮らしづらく、出かけることもままならない」と話し、「警備員とのいたちごっこが続いている」とこぼした。

 アブドゥル・カディル(Abdul Kadir)さん(54)という別の住民によれば、子どもたちは警備員に邪魔をされ、学校へ行くのも一苦労だという。カディルさんの10歳の娘は「学校へ行くにはトンネルを抜けないといけない」と明かし、「前みたいに簡単に学校へ行けるようになりたい」と嘆いた。さらに悪いことに、コースの下にトンネルを掘ったせいで半年前から井戸が枯れ、村では水も手に入らなくなった。

 農家は土地を奪われ、漁師は水辺から引き離され、多くの住民が生活の糧を失った。担当の人権弁護士によれば、住民の中には警備員に追い出された人もいれば、わずかばかりの補償を受け入れることを強いられた人もいるという。

 農業を営んでいた53歳のシバワイ(Sibawai)さんは、土地のほとんどを失った。まずは役人が何度かやって来て立ち退きを求められ、最終的には警察が出張ってきたという。「連中は私の土地に700人ほどを配備した。こちらもブルドーザーが持ち込まれるのを阻もうとしたが、連中に追い出された」とシバワイさんは話す。