■「ほんの手始め」

 国連の専門家は昨年3月、インドネシア政府とプロジェクトの関連会社に対し、「人権を尊重する」よう勧告した。しかし政府は、新たに国内の10か所をバリ(Bali)島と同じやり方で観光地として発展させることを目指しており、ロンボク島はそのうちの一つでしかない。

 島は貧しく、500人以上が命を落とした2018年の大地震からの復興も思うように進んでいない。ほとんどの地元民にとって、スーパーバイクの観戦チケットは高額すぎて手が出ず、そのため多くの住民は、コースを見下ろす場所からレースを眺めて満足するしかなかった。

 当局は、事業に多くの投資が集まることを期待している。島のある西ヌサトゥンガラ(West Nusa Tenggara)州のズルキフリマンシャ(Zulkieflimansyah)知事は、「今回の国際サーキットは、ほんの手始めだ」と話している。

 人権侵害との批判が出ている点について尋ねると、知事は投資家と地元の両方が満足する形で問題が解決することを「非常に楽観している」と語った。

 それでも、自宅に隣接するコースの内側に取り残されたラティフさんは、レースを見る気になれなかった。ラティフさんは「独りぼっちで見捨てられたように感じる。まるでかごの中の鳥のようだ」と話した。(c)AFP