【11月27日 東方新報】「持ち家志向」が圧倒的な中国で、近年は賃貸住宅市場が急激に広がっている。「賃貸業界は今後、黄金の10年を迎える」と言われている一方、賃貸トラブルも目立ってきている。

 中国では都市部の土地は国が所有、農村部は農民委員会の集団所有だが、土地・建物の「使用権」が実質的な所有権として扱われている。日本のような一軒家へのこだわりは少ない一方、マンションを購入する市民が大半。中国の持ち家住宅率は統計の手法で数字が異なるものの、いずれも70%を上回る。国際的に見て持ち家志向が強い日本でも持ち家率(2018年、総務省統計)は61.2%だ。

 中国では結婚する際に男性がマイホームを購入するのが一般的。「顔よりもマイホームを重視する」と言われるほどで、いい物件を手に入れて初めて結婚の条件を満たすため、持ち家率が圧倒的に高くなる。しかし最近は高度経済成長に伴い不動産価格が高騰し、北京や上海の中心部のマンションは中古で300万元(約5418万円)、新築で500万元(約9030万円)の価格が当たり前に。一生ローンに追われる「房奴(住宅の奴隷)」という言葉が生まれ、2010年代後半から「マイホームにこだわらず賃貸」という意識が広まってきた。

 中国の賃貸住宅はテレビ、冷蔵庫、ベッドなど家具一式備え付けが一般的で、1か月の保証金と3か月の家賃前払いという契約が多い。不動産仲介業「自如(Ziroom)」は運営するアプリで貸す側・借りる側をマッチングさせ、入居後も掃除の代行サービスや家具の無償メンテナンスをすることで人気となっている。自如によると、2030年には賃貸人口は2億6000万人に達し、市場規模は10兆元(約181兆円)近いと予測されている。

 ただ、不動産価格の高騰で当然、賃貸住宅の家賃も高くなっている。北京市では地域によるが、50~70平方メートルの物件で家賃は6000~8000元(約10万8357~約14万4476円)程度が多い。夫婦共働きの中流家庭でも、収入の半分が家賃に消える計算だ。給料が4000元(約7万2238円)程度の若者は20平方メートルで3000元(約5万4178円)の部屋をルームシェアしたり、わずか6平方メートルの部屋に住んだりするワーキングプアの若者もいる。

 不動産仲介業者のトラブルも目立つ。最近は家賃の前払いが1か月で済む代わりに、1年間の賃貸契約を結ぶプランを勧める仲介業者が多い。しかし、仲介業者が借り主から受け取った家賃をオーナーに渡さずに資産運用をしたあげくに破綻し、オーナーが借り主に家賃を再度請求したり、払えなければ追い出したりする事例が問題となっている。中国では貸主側の立場が圧倒的に強く、契約書の内容も「口約束」「言葉遊び」といわれるほど拘束力が弱い。

 賃貸住宅がまだまだ不足していることも家賃が高くなる背景にある。政府は持ち家中心の住宅政策から賃貸住宅の建設・供給に軸足を移しており、今年7月には社会保障的性格をもつ賃貸住宅(保障性賃貸住宅)の供給を強化する方針を発表。公有地を使い、1世帯70平方メートル以下で地域の平均価格より低家賃の賃貸住宅建設を促進し、整備をする自治体には補助金支給や免税措置を図るとしている。住宅問題は市民の生活や不満に直結するだけに、政府も対策を急いでいる。(c)東方新報/AFPBB News