【11月25日 東方新報】中国で11月11日を中心に行われる国内最大のオンラインショッピングセール「双11(ダブルイレブン)」が今年も実施された。流通総額(GMW)は過去最高を更新したが、例年のようなお祭り色は鳴りをひそめ、「社会貢献」や「エコロジー」を前面に出したのが特徴だった。

 中国では数字の「1」に独り身のイメージがあることから、1が4つ並ぶ11月11日は「独身の日」と呼ばれ、交際相手がいない若者が集まってパーティーなどをしていた。これに目を付けたIT大手・阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)が2009年、「独身の日に自分へのごほうびを買おう」と呼びかけ、運営するECサイト「天猫(Tmall)」で家電製品などの割引セールを開催した。規模は年々増加し、EC大手の京東(JD.com)も参入。世界最大級ともいわれる巨大ECセールに発展した。11月11日だけのイベントから期間も拡大し、10月後半から予約を開始する一大キャンペーンとなった。

 今年のダブルイレブンは中小企業や農村部からの参入を促進したのが特徴だ。天猫には過去最多の29万ブランドが参加し、その65%が中小企業や工業地帯のメーカー、新ブランドで、初参加は7万ブランドに上った。また、農産品の売り上げは前年比20ポイント増となり、かつて貧困地域に指定されていた832県の農産品などは28.8ポイント増となった。ユーザー向けには、画面の文字を大きくしたり音声で商品を検索したりできるシニアモデルの設定、障害者割引などもあった。

 京東は保証額の引き下げなどで中小企業の基本参入コストを78.5ポイント削減し、中小ブランドの参入は昨年の4倍となった。貴州省(Guizhou)修文県(Xiuwen)のキウイが前年の10倍、江蘇省(Jiangsu)宿遷市(Suqian)のカニが600倍の売り上げなど、農産物の売り上げも急増した。

 エコロジーや省エネを意味する「グリーン」も今年の特色だ。アリババは省エネ製品や低炭素製品を展示する「グリーンサイト」を新設。ECビジネスを支える河北省(Hebei)のデータセンターで再生可能エネルギーを使用し、2万6000トンの二酸化炭素(CO2)を削減した。

 例年のダブルイレブンはスタートと同時に派手なイベントが行われ、「早くも売り上げ1億元(約18億円)を突破!」などと実況中継が行われた。今年はイベントや金額の発表はなく、ユーザーの間では「静寂のダブルイレブン」と呼ばれた。それでも天猫のGMWは前年比8.5ポイント増の5403億元(約9兆6464億円)、京東は28.6ポイント増の3491億元(約6兆2328億円)。2社合わせて15.6ポイント増の8894億元(約15兆8792億円)とすべてが過去最高を上回った。

 2009年のスタートから倍々ゲームのように売り上げを伸ばしてきたダブルイレブンは、急成長する中国経済の一つの象徴だった。中国政府は今、貧富の格差を是正してすべての人が豊かになる「共同富裕」や、CO2の排出を削減する「低炭素社会」の実現に力を入れている。今年のダブルイレブンはその路線に歩調を合わせたといえる。中国最大のECセールは、中国の現状や将来目指す社会を映す「鏡」のような存在になっている。(c)東方新報/AFPBB News