【11月26日 東方新報】中国科学院(Chinese Academy of Sciences)心理学研究所が発表した「国民メンタルヘルス報告書(2019〜2020年)」によると、中国で思春期の若者の24.6%にうつ症状が見られ、重度の症状は7.4%に上るという。教育省は11月に入り、学校の健康診断にうつ病の検診を組み込み、メンタルヘルス対策を強化していく方針を明らかにした。

 うつ病は心理面で気分の落ち込みや物事への興味の低下、意欲の低下などを、身体面で食欲不振や不眠をもたらす。重度になると自傷行為を起こし、自殺に至ることがある。国民メンタルヘルス報告書によると、うつ症状が見られるのは小学生が約10%、中学生が約30%、高校生が40%近くと、年齢とともに割合が増えている。

 原因について、北京大学回竜観臨床医学院うつ病病棟の陳林(Chen Lin)主任は「家庭の不和、親からのプレッシャー、学校でのいじめといった問題のほか、青少年が『早熟』になっているのも一因」と指摘。インターネットの普及などで「その年齢では学ぶ必要がない多くのネガティブな情報にさらされている」という。

 青少年心理カウンセラーの王冠(Wang Guan)さんが約500人の中高生を対象に心理調査をしたところ、132人が「勉強に疲れた」と答え、34人が「人生に意味がないと感じている」と答えたという。王さんは「一人っ子のティーンエージャーは近所の人や同級生との交流、自然との触れ合いが少なく、自宅でゲームをしたりテレビを見たりして日々を過ごす。バーチャルな世界に浸り、生活にリアルさが欠けている中、現実の世界でトラブルに遭遇すると、すぐに対応が難しくなる」と分析する。また、教師や保護者が「うつ病は大人がなるもの」「反抗期の一種」ととらえ、無理解が子どもの症状を悪化させるケースも少なくないという。

 子どものうつは以前から問題となっており、国家衛生健康委員会などは2019年、すべての学校にカウンセリングルームを設置し、メンタルヘルススタッフを配置するよう指導。2020年には高校の健康診断でうつ病の検診を行い、メンタルヘルスの記録を作成するよう求めた。教育省は各学校でメンタルヘルスの授業を行うよう指示している。

 ただ、中国メディアによると、ある高校ではカウンセラーが年度の初めに1回、全生徒に向けて講話をするだけで、メンタルヘルスの授業も大学受験に向けた勉強に置き換えているという。

 北京師範大学(Beijing Normal University)学生心理カウンセリング・サービスセンターの喬志宏(Qiao Zhihong)主任は「カウンセラーは学校での存在感が薄く、生徒から信頼されていないのが実情。人材が不足し、専門能力が足りない職員がカウンセラーを務めることも目立つ」と説明。思春期にうつ病になった若者は約70~80%が成人してから再発すると言われる。教育現場でうつ症状を早期に発見し、対応する態勢づくりが急務となっている。

 日本でも国立成育医療研究センターが今年2月に発表した調査によると、高校生の30%、中学生の24%、小学校4~6年生の15%に中等度以上のうつ症状が見られるという。子どものうつは各国共通の深刻な問題でもある。(c)東方新報/AFPBB News