【11月27日 東方新報】触れるだけでバラバラになってしまいそうな虫食いだらけの古書に水を少し吹きかけ、ピンセットや筆、はけ、のりを使って1ページずつ丁寧に修復する。中国中部の湖南省(Hunan)図書館にある古書修復室で、今年72歳の師玉祥(Shi Yuxiang)さんが真剣な表情で作業を続ける。古書修復師として約半世紀、多くの文化遺産をよみがえらせてきた。

 中華人民共和国が成立した1949年に生まれた師さん。1972年に湖南省図書館に勤務してすぐ北京に派遣されて修復技術を学び、図書館で第一世代の修復師となった。古典書籍や系図、書画、書類、手紙など図書館が所蔵する数え切れないほど多くの文献を救い出し、湖南省と周辺の湖北省(Hubei)、広東省(Guangdong)、貴州省(Guizhou)の修復専門家を育成してきた。

「虫食いやカビ、糸のほつれは、古書の『傷』です。何十もの工程を経て、丁寧に修復していきます」。師さんは書籍の年代、装丁の様式、傷み具合、紙の状態を確認し、顕微鏡で紙の繊維も調べる。そして他の職員と議論しながら修復計画を立てる。その姿はまるで患者と対話し、治療計画を立てる医師のようだ。

 清朝・乾隆帝時代の刻本「半霞楼近稿」は、湖南省図書館にだけ残る書籍。ページは破れやすく、「傷」は深刻だ。「古いものは古いものとして修復する」という原則に基づき、安徽省(Anhui)産の同じ紙質、同じ厚さの竹紙を修復に使用。茶葉を煮込んだ水で紙を染め、原書と同じ色合いにする。「半霞楼近稿」の修復に要した期間は7か月。これまでも原著が西晋時代の解説書「春秋経伝集解」や元朝の韻書「古今韻会挙要」など、貴重な文化遺産を守ってきた。

 古文書は何千年もの中国文化の語り部であり、その保存は中華民族の文化的生命を継承することとなる。中国国家図書館によると、中国の公的施設が所有する古書の総数は5000万点を超え、そのうち1000万点が緊急の修復を必要としているという。修復のプロを育てることはますます急務となっている。

 現在、中国は古書修復のための国家センターを各地に設立している。「十数年前は修復に携わる専門家が100人にも満たず、パンダよりも貴重な存在でした」と笑う師さん。修復師は現在、1000人を超えるようになった。師さんは「修復の技術も多様化している。古文書と同様に、修復技術も保存していかなければならない」と力を込める。

 2016年には、湖南省図書館に修復技術の伝承を目的とした国家センター「湖南研究所」が発足。定年退職していた師さんは指導者として迎え入れられ、後進の指導に当たっている。昨年は、全国古文書修復技能競技大会の審査員も務めた。

 師さんが指導する修復師の中には、孫の世代の20代もいる。かつての若き自身の姿と重なる。師さんは「古書の保存のため、絶えず新しい血を送り込む必要がある。私は生涯をかけて、中国の優れた伝統文化の継承に全力を尽くします」と静かに語る。(c)東方新報/AFPBB News