【11月26日 東方新報】中国政府が発表した「義務教育段階における宿題や塾などの負担軽減に関する意見」(通称・双減政策)を受け、民間の大手学習塾が義務教育事業から撤退すると次々と表明。今後の生き残り策として、語学や資格試験、技能学習への移行のほか、インターネットで農産物をライブ販売するアイデアも登場している。

 7月下旬に発表された双減政策は、学校が生徒に課す宿題の上限を学年ごとに設定。さらに既存の学習機関は非営利機関に転換するよう求め、休日や夏・冬休みの講習、上場による資金調達を禁止した。教育費の抑制や教育格差の是正、さらに少子化対策につなげる狙いといわれている。

 この「塾禁止令」を受け、各地の学習塾は次々と閉鎖。授業料を返還しない夜逃げ騒動も起きた。そして民間学習塾大手3社の「新東方教育科技集団(New Oriental Education & Technology Group)」「高途(Gaotu)」「好未来(TAL)」は11月中旬、「K9(義務教育期間)の事業を年内で終了する」と表明した。最大手の新東方は、幼稚園児と小中学生向けの事業が売上高の50%以上を占めており、「来年の業績は重要な影響を受ける」と説明。同業他社も同様の打撃を受けるのは確実だ。

 今後の経営について新東方は大学生の英語検定試験や大学院入試、留学試験、技能教育に力を入れ、将来は司法試験やコンピューター資格向けの講習を行うとしている。高途も語学や公務員・教員試験、金融・財務資格の学習コースに活路を開く考えだ。好未来の創業者、張邦鑫(Zhang Bangxin)CEOは「K9事業と別れを告げても2~18歳の子どもたちがメーンユーザーであることに変わりはない」と述べ、子ども向けの出版やデジタルコンテンツを活用した新しい学習サービスを開発するとしている。

 この中で特に話題になったのが新東方創業者の兪敏洪(Yu Minhong)CEOだ。11月7日、全国の学習塾1500か所を閉鎖し、塾で使っていた学習机といす8万セットを農村の小中学校に寄付すると発表。さらに、失業する講師数百人と共に、インターネットのライブ放送で農産物を販売する構想を表明した。中国ではネットのライブ販売が消費者の購入ルートの一つとなっているが、兪氏は「単にモノを売るだけでなく、農業の産業高度化や農村の活性化、農家の生活支援をする」と強調している。

 1962年に江蘇省(Jiangsu)の農村に生まれた兪氏は、母親の献身的な支えを受けながら3度の大学受験を経て北京大学に入学。卒業後に英語教師をするかたわら新東方を設立した。中国から米国、カナダへの留学に成功した学生の半分以上は新東方で学んだといわれる。兪氏はIT界最大手阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)の馬雲(ジャック・マー、Jack Ma)と並ぶ「チャイニーズドリーム」の象徴として知られている。

 専門家の間では「資格試験や技能教育などの分野は既に別の大手教育機関が専門としており、今後は『共食い』になる」と冷ややかな見方が多い。机といすを寄付する兪氏の行動には称賛がある一方、「次の金もうけへの布石」という声も。ライブ販売構想にはネット市民から「そんな簡単にうまくいくはずがない」という反応が目立つ。中国の民間教育業界は今後、生き残りを図れるのか。それは来年以降、明らかになっていくことになる。(c)東方新報/AFPBB News