【12月3日 AFP】バスの長旅でうたた寝をした経験がある人は多いだろうが、眠るためだけに料金を支払ってバスに乗るのはどうだろう。このアイデアを基に企画されたのが、不眠解消に役立つと銘打った香港のバスツアーだ。

 ある晴れた日曜の午後。およそ70人の乗客が2階建てバス2台に乗り込んだ。はしゃぐ子どもや退職した高齢者など、客層はさまざま。バスは「目的地のないルート」を走る。

 1台は「静かなバス」で、乗客は車内で寝ることができる。もう1台には従来の観光オプションが付いている。

 行程85キロのツアーは、にぎやかな都市部を出発して主に沿岸部の幹線道路を走り、市内の空港に到着した。新型コロナウイルス流行の影響で、人出は少ない。

 5時間のツアー中、バスはさまざまな絶景スポットで停車する。眺めを楽しむ乗客もいるが、多くの客は配られた耳栓とマスクを装着して早々と眠りに就いた。

 静かなバスを選んだ乗客の一人は、「香港人は仕事や家賃の支払い、日々の生活に追われてストレスを抱えていますし、今は旅行もできませんから」と、新型コロナの厳しい防疫措置で外国からほぼ切り離された現状について話した。

「こうしたストレスが重なって、香港人の多くはあまり眠れていないと思います」

 一方、この数週間寝不足が続いたので参加したという男性は、バスから見える景色に目を奪われたと話した。

「今日の天気は寝るにはもったいないですよ」

 ツアー料金は、99〜399香港ドル(約1400〜5800円)だ。

 企画した旅行会社「Ulu Travel」社長のフランキー・チョウ(Frankie Chow)氏は、走行中に乗客の眠りを妨げないよう、なるべく信号が少ないルートを選んだと説明した。

 このツアーで、寝不足の人には昼寝の機会を、外国との接触を断たれている香港人にはちょっとした気晴らしを提供したいと話した。(c)AFP/Yan ZHAO / Xinqi SU