【11月22日 AFP】スウェーデン・ストックホルムに本部を置く政府間組織「民主主義・選挙支援国際研究所(IDEA)」は22日、報告書「民主主義の世界的状況(Global State of Democracy)」2021年版で、初めて米国を「民主主義が後退している国」に分類したことを明らかにした。「目に見える悪化」は2019年から始まったと指摘している。

 報告書によると、世界全体では少なくとも4人に1人が「民主主義が後退している国」に住んでいる。これに「権威主義的」または「ハイブリッド型」の政権下にある国を合わせると、世界人口の3分の2人以上が該当する。

 報告書を共同執筆したアレクサンダー・ハドソン(Alexander Hudson)氏はAFPに、「米国は質の高い民主主義国家で、公平な行政(汚職と予測可能な執行)の指標は2020年にさらに向上した。しかし、市民の自由や政府に対するチェック機能の指標は低下しており、これは民主主義の根本に深刻な問題があることを示している」と説明した。

 報告書は、「歴史的な転換点は2020〜21年、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が2020年米大統領選の結果の正当性に疑義を唱えた際に訪れた」としている。

 ハドソン氏はさらに、黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが警官に殺害された事件を受けて広がった「2020年夏の抗議デモの中で、集会・結社の自由の質が低下した」と指摘した。

 IDEAでは、世界約160か国について過去50年間の民主主義指標に基づいて評価し、「民主主義国(後退国を含む)」「ハイブリット型政権」「権威主義的政権」の三つに分類している。

 IDEAのケビン・カサスザモラ(Kevin Casas-Zamora)事務局長は、「信頼できる選挙結果に異議を唱える傾向が強まっていることや、(選挙への)参加を抑制しようとする動き、分極化の急激な進行などに見られるような、米国における民主主義の目に見える悪化」は「最も懸念すべき展開の一つだ」と述べている。

 過去10年余りで、民主主義「後退国」は2倍に増加した。また、2020年には「権威主義」に傾いた国の数が、民主化した国の数を上回った。IDEAは、この傾向は2021年も続くと予想している。

 2021年の報告書では、民主主義国は98か国で、近年最少となった。「ハイブリッド型」の国は20か国で、これにはロシア、モロッコ、トルコなどが含まれる。「権威主義的」な国は47か国で、中国、サウジアラビア、エチオピア、イランなどが入っている。

 報告書は、民主主義の弱体化傾向について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行が始まって以降「より深刻で憂慮すべきものになっている」と述べている。(c)AFP/Marc PREEL