【11月21日 AFP】エチオピア国立博物館(National Museum)で20日、英国軍によって150年以上前に略奪され、長期にわたる交渉の末に返還された貴重な文化財が報道陣に公開された。

 公開されたのは、儀式用の冠や皇帝の盾、動物の角に銀の浮き彫りを施したコップ、手書きの祈祷(きとう)書、十字架やネックレスなど。英国、ベルギー、オランダから回収されたもので、その多くは当時アビシニアと呼ばれていた現エチオピアで、皇帝テオドロス2世(Emperor Tewodros II)を英国軍が破った1868年の「マグダラの戦い(Battle of Magdala)」の際に略奪された。

 これらの文化財は9月、英ロンドンで行われた返還式典で正式にエチオピア側に引き渡されていた。エチオピア政府によると、略奪文化財の返還としては最大規模となる。

 アフリカでは、植民地時代に欧米諸国が略奪した文化財の返還を求める声が高まっている。多数の国宝レベルの貴重な文化財が、各国の博物館の収蔵品や個人のコレクションとなっている。フランスは今月初め、130年前に略奪した王室の宝物など約30点を旧植民地の西アフリカ・ベナンに返還した。

 エチオピア政府は引き続き、大英博物館(British Museum)が収蔵するタボットなどの略奪文化財を返還するよう英国に求めている。タボットは、聖書で「モーセの十戒(Ten Commandments)」が納められたとされる「契約の箱(Ark of the Covenant)」を模した木版や石板。

 エチオピアはまた、テオドロス2世が「マグダラの戦い」で敗北し自殺した後、英国に連行された息子アレマエフ王子(Prince Alemayehu)の遺骨の返還も求めている。

 ナシセ・チャリ(Nasise Challi)文化観光相は20日、「われわれの文化や価値観を今に伝えるさまざまな文化財が、戦争中に略奪され不法に持ち出された」と述べ、返還するよう訴えた。(c)AFP