【11月19日 AFP】米司法省は18日、フィリピンのキリスト教系新興宗教の教祖の男が、未成年者を含む女性の人身売買に関与し、逆らえば地獄に落ちると脅して自身との性行為を強要していたとして、男を起訴した。

 司法省によると、起訴されたのは「キングダム・オブ・ジーザス・クライスト、ザ・ネーム・アバブ・エブリ・ネーム(Kingdom of Jesus Christ, The Name Above Every Name)」の教祖、アポロ・カレオン・クイボロイ(Apollo Carreon Quiboloy)被告(71)。

 米カリフォルニアを拠点とする偽の慈善団体が集めた資金を用い、フィリピンで女性を勧誘して渡米させ、教会で働かせていたという。

 起訴状によると、信者が「約束された神の子」と呼ぶクイボロイ被告と共犯の2人は、12~25歳の女性を性目的で人身売買した罪に問われている。「牧師」と呼ばれる女性たちは、クイボロイ被告の付き人として働かされていた。

 米司法省の報道発表には、「被害者はクイボロイ被告の食事を作り、住居を掃除し、マッサージを行った。そして『夜勤』と呼ばれる仕事では、被告との性行為を要求された」と記されている。

「クイボロイ被告と同教会の運営者は、暴力や暴言に加え、地獄に落ちると脅して、被告との『夜勤』、つまり性交を強制した」とされる。性目的の人身売買は、2018年まで少なくとも16年間続いていた。

 女性には報酬として「良質な食事、高級ホテルでの宿泊、観光地への旅行、年1回の成果給」が与えられた。その資金は、米国で活動する教会関係者が集めていた。

 今回の起訴は別の事件を足掛かりにしており、被告は計9人に上る。うち3人は、18日に米国内で逮捕された。

 司法省によると、ハワイ(Hawaii)、ラスベガス(Las Vegas)、ロサンゼルスの高級住宅街に邸宅を持つクイボロイ被告は、他の2被告と共にフィリピン・ダバオ(Davao)にいるとみられている。

 教会はウェブサイトで、被告が1985年に創設して以来、200か国に600万人の信者がいると主張している。

 クイボロイ被告はロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比大統領とも近しいとされる。10月には被告の公式フェイスブック(Facebook)に、「近しい友人で宗教的指導者であるアポロ・C・クイボロイ牧師との私的な夕食会でのドゥテルテ大統領」という説明と共に、写真が投稿されている。

 比大統領報道官は、被告と大統領の「個人的な関係」へのコメントは差し控えると述べた。また、米国から被告の身柄引き渡し要請があったかどうかは把握していないとした上で、フィリピンは「誰であれ(身柄引き渡しの)要請があれば協力する」と明言した。(c)AFP