【11月17日 東方新報】中国では子ども料金は「年齢」でなく「身長」で区分するのが一般的だが、国家鉄路局は10月末、鉄道の子ども料金を身長でなく年齢に切り替える規則草案を発表した。子どもの身長が年々伸びており、「身長で区別するのは実態と合わない」という声が相次いでいた。

 中国では鉄道駅やテーマパークなどの施設の入り口にはだいたい、身長を測るボードが置かれている。鉄道では、身長120センチ以下は無料、120~150センチは半額、150センチ以上は通常料金としている。ただ、中国の経済成長に伴い子どもの食生活が豊かになるにつれて、子どもの平均身長も伸びている。

 2018年の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、中国科学院研究員の莫照蘭(Mo Zhaolan)代表が「この40年間で子どもたちの平均身長は8センチ上昇しており、小学生でも割引料金が適用されない場合がある。子どもの無料・割引乗車券の基準に年齢を加える必要がある」と提案。2019年6月には、湖南師範大学(Hunan Normal University)法学部の大学生10人が、鉄道を運行する国家鉄路集団に「子ども料金を身長で決める規則を改正すべきだ」と公開書簡を送った。

 2019年5月には安徽省(Anhui)で、ある父親が11歳の子どもと一緒に高速鉄道に乗った際、子どもの身長が150センチを超えていたため子ども料金と通常料金の差額26元(約465円)を支払うよう到着駅の駅員に要求された。父親は「身長で運賃を決めるルールは理不尽」として国家鉄路を提訴。今年10月の民事判決では「駅員は規則に基づいて行動しており、原告の尊厳を傷つける行為はなかった」として訴えを退けたが、父親は納得せず控訴している。裁判に発展したケースは珍しいが、「小学生に入る前の子どもが、身長が120センチを超えているため無料にならなない」などのように、「同じ年齢でも値段が違う」ということへの不満は市民の間で高まっていた。

 国家鉄路局が新たに発表した「鉄道旅客規定草案」は、実名制の乗車券を購入する際は6歳以上14歳未満が子ども料金、14歳以上は通常料金と定め、非実名制の乗車券は身長の条件を残した。11月27日までパブリックコメントを募り、最終決定する。

 今年6月1日に施行された改正未成年者保護法の第45条では、公共交通機関の利用で未成年者に無料または優待運賃を設けるよう規定しており、恩恵を受ける条件を平等にするよう規定を見直した形だ。中国社会科学院法律研究所の董文勇(Dong Wenyong)准研究員は「中国の法律では子どもを年齢で定義している。身長は関係ない」と指摘。今回の新規定案は社会でおおむね歓迎されている。

 一方、中国政法大学(China University of Political Science and Law)の苑寧寧(Yuan Ningning)准教授は「改正未成年者保護法は、未成年者の定義を『18歳未満』と明記している。14歳以上は一律通常料金とする措置は法律と矛盾している」と提起。未成年者全員が恩恵を受ける措置を求めている。鉄道料金の見直しは今後、テーマパークなど多くの娯楽施設にも影響を与えるだけに、市民の関心は高い。(c)東方新報/AFPBB News