【11月25日 AFP】中国の専制主義的な指導部をちゃかしながら、商業的にも大ヒット──。ポップソング「玻璃心(フラジャイル、Fragile)」は前代未聞と言えることをやってのけ、動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」での再生回数は3000万回を超えている。

 標準中国語で歌われるポップス、いわゆる「マンドポップ」で中国政府について少しでも触れると、それだけでキャリアが終わってしまうこともある。だが、マレーシア人ラッパー、ネームウィー(Namewee)と、オーストラリア人歌手キンバリー・チェン(Kimberley Chen)のコラボソングはそんな流れにあらがった。

 中国政府を風刺したラブソングが10月にリリースされると、数日後には、2人は中国の検閲当局によってインターネット上から存在を消し去られ、世界最大の中国語圏市場でブラックリストに入れられた。

 しかしこの曲は、アジアの多くの人々、そして世界各地の中国系移民の間では支持され、大反響を呼んでいる。

 台湾・台北にある国立台湾大学(National Taiwan University)音楽学研究所の准教授、DJハットフィールド(DJ Hatfield)氏はブラックリスト入りについて、「検閲はしばしば最高の宣伝になります」とAFPに語った。

 中国政府を皮肉ったこの曲を五つの点から見てみよう。

■ピンク色

「ガラスのハート」を意味するタイトルを持つこの曲は、背景を知らずに聞けば、甘ったるいバラードに聞こえるかもしれないが、ミュージックビデオにはイントロが流れる前に政治的な内容を示唆する警告が出てくる。

「傷つきやすいピンクの方は、ご注意ください」

 この警告は、「小粉紅(シャオフェンフォン、Little Pink)」と呼ばれる中国の愛国的なネットユーザーに向けられている。

 デュエットをする2人の衣装から、パンダが着ている迷彩柄のつなぎまで、動画はピンク(紅)色であふれている。パンダは、明らかに中国政府のことだ。キャッチーなサビのコーラスでは、傷つきやすくて批判に耐えられない相手に「ごめんね」という言葉が繰り返される。