家族の「絆」を再現するミニチュア模型 若き職人が作る古民家や農村風景が人気
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【11月16日 東方新報】素朴な土塀、レンガ造りの家、海草のアマモ葺き屋根、崖に掘られた横穴式の住居…、そして懐かしい家の周りに広がる田園風景…。中国・山東省(Shandong)済南市(Jinan)に工房を構える李寿昇(Li Shousheng)さんはこの10年間で400近いミニチュア模型を制作した。家の門に立つナツメの木、中庭の井戸や石臼、農作業に励む人々など、模型は細部にわたる。100種類近い工具や塗料を使い、発泡スチロールや木の板を削って原型を作り、丁寧に色を塗って在りし日の光景を再現する。
「ミニチュア模型を作る大学の授業で学生寮を作ったら、満点に近い98点をもらいました。先生から絶賛され、卒業後は模型造りを仕事にしたいと考えたんです」。33歳の李さんはそう振り返る。最初は注文がなく、一緒に仕事を始めた仲間2人は工房から離れていった。李さんは一人で売れるあてもない模型を作り、展覧会などで紹介するうちに評判が高まっていった。
ある20代の女性からは、彼女が子どものころに月見をしながら家族で宴会をした実家の光景を再現するよう依頼された。李さんが注文通りに仕上げた模型を彼女が祖父にプレゼントすると、祖父は涙を流して喜んだという。李さんは「ミニチュア模型の制作で最も肝心なことは、人の記憶にある最も深い情景を再現することです」と話す。
比較的小さい50~60センチの作品で料金は7000~8000元(約12万4852~14万2688円)。20平方メートルにわたり農村を再現した大作は20万元(約357万円)。月に4、5件の模型を作り、李さんの年収は50~60万元(約892万~1070万円)に達している。李さんがインターネットに投稿した模型制作の動画は数百万回再生され、1万件以上のコメントが寄せられている。
古民家や農村のミニチュア模型の注文が中心だが、依頼主は1970~90年代の働き盛りが多いという。「何年も家に帰れない人や、既に家が取り壊された人もいる。ミニチュア模型は単なる模型ではなく、数世代にわたる家族の記憶を呼び起こします」と李さん。
中国では急激な経済成長に伴い、人々のライフスタイルも変化している。若者は都会で暮らし、残業に追われ、3世代が一緒に暮らす家庭も少なくなった。家族の絆を最も大切にする中国の伝統が薄れゆく中、ミニチュア模型はその思いだけでもとどめようとする証しとなっているようだ。(c)東方新報/AFPBB News