村里すべてがアトリエに 民家に壁画を描く青年画家
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【11月15日 People’s Daily】晩秋を迎えた中国河南省(Henan)輝県市(Huixian)小屯村。村民が見守る中、尚勤傑(Shang Qinjie)さんが足場の上に立ち、スプレー缶で壁に油絵の具を吹き付けている。「のどかな田園風景をアニメ風に描きました。1~2日程度で完成します」。彼は村の民家の壁にさまざまな絵を描き続けている。
1990年代生まれの尚さんは大学卒業後に地元を離れて就職し、趣味で絵を描いていた。実家に戻り、同級生の誘いで壁画アートを手伝い始めると、次第にのめり込むようになった。「この村をおしゃれで趣のある雰囲気にしたい」。村全体が彼のアトリエとなり、壁に多くの命が吹き込まれていった。
そして思いもかけず、この小さな村が「バズる」ことになった。村民たちが自宅の壁画を撮影し動画投稿サイトにアップすると、多くの人が村を訪れ、壁画を見学し、記念写真を撮るようになった。
村人たちは当初、観光客が殺到することに戸惑いを感じていた。だが、村の生活は少しずつ変化していった。観光客相手にお菓子を売ったり小さな飲食店を開いたりすると、商売が繁盛。観光客がさらに増加し、村では民宿やレストランと一体となった観光モデルづくりに励んでいる。
「今年の春節(旧正月)は1日で最高2000元(約3万5700円)以上の売り上げがあった」。小さな売店を営む趙海青(Zhao Haiqing)さんは満足そうに話す。「最近は親戚や友人が訪れて『美しい村になったね』と言ってくれる」と笑みを浮かべる。
尚さんがネットに投稿した壁画の映像は、数十万件もの「いいね!」を獲得している。「うちの村でも絵を描いてくれない?」という書き込みも多い。小屯村の人々は尚さんに次々と壁画を依頼し、今では村の家の80%に壁画が描かれている。尚さんは急いで絵を完成させ、他の村にも駆けつけている。
尚さんは「もともと遊びで絵を描いていたが、次第に意義を感じるようになってきた。私が村で壁画を描くことで、多くの人が農村を好きになってほしい」。田園アートがどんどん評価され、尚さんは達成感を覚えている。
村の変化は壁画だけではない。でこぼこの泥道はなめらかなコンクリートの道路に整備され、村人は自宅をきれいに装飾するようになった。小屯村を含む大王庄村の施磊(Shi Lei)第1書記は「以前はほとんど知られていなかった小屯村が有名になり、『七色の里』と呼ばれるようになった。現在、昆虫博物館の建設など新しい文化観光プロジェクトを次々と進めています」と話している。(c)People’s Daily/AFPBB News