【1月2日 AFP】トルコ・イスタンブールのグランドバザール(Grand Bazaar)から数ブロック先の薄暗い裏通りで、荷物運搬人のバイラム・ユルドゥズ(Bayram Yildiz)さん(40)が仕事の順番を待っている。これから背負う荷物は、自分の体重の2倍近くある。

 他にも数人が順番を待っている。大型トラックから降ろした生地を引き取り、夜明け前に地元の店に届けるのだ。頭は垂れ、膝は曲がっている。

 筋骨隆々のユルドゥズさんは、「自分は半分がヘラクレス(Hercules、ギリシャ神話の英雄)で、半分がランボー(Rambo、アクション映画『ランボー(Rambo)』の主人公)だ」と冗談を飛ばし、一度に200キロの荷物を運ぶことができると豪語した。

 イスタンブールにはユルドゥズさんのような荷物運搬人が数百人おり、オスマン帝国(Ottoman Empire)時代から続く伝統の仕事を担っている。

 衣類や生地を背中に担ぎ、街が目覚める前の人影のない通りをゆっくりと進む。中には自分はついていないと不満を漏らす人もいる。

「最悪の仕事だよ。でも他にやることがない」。過酷な仕事を35年間続けている仲間のオスマンさんは言う。

 都市史家のネジデット・サカオール(Necdet Sakaoglu)氏によると、イスタンブールの荷物運搬人の伝統が全盛期を迎えたのは1800年代初期のこと。オスマン帝国のスルタン、マフムト2世(Sultan Mahmud II)の統治下で、イスタンブールがコンスタンティノープル(Constantinople)と呼ばれていた時代だ。

 当時の運搬人は、大半がアルメニア人だった。活気ある大都市での多文化の歴史を反映していた。

 今日では、この仕事を主に担っているのはクルド人だ。民族的に多様な南東部のマラティヤ(Malatya)県やアドゥヤマン(Adiyaman)県の出身で、何世代にもわたってイスタンブールの商人との関係を築いてきた。

 荷物運搬人は通常、チームを組んでリーダーの指揮の下、仕事をする。リーダーの仕事は業者と仕事の取り決めをしたり、シフトの終わりに料金を分配したりすることだ。

 ユルドゥズさんの1日の稼ぎは200~300リラ(約2300~3400円)、もっと稼げる日もたまにあるという。