【11月15日 AFP】元陸上男子短距離のウサイン・ボルト(Usain Bolt)氏は14日、東京五輪男子100メートルの優勝タイムには手が届いたと主張し、現役に復帰して同大会で4連覇も果たせたと述べた。

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 35歳のボルト氏はAFPに対し、ジャマイカの選手が結果を残せず、イタリアのラモントマルチェル・ヤコブス(Lamont Marcell Jacobs)が驚きの優勝を果たした東京五輪を母国の自宅から見ていてもどかしかったと語った。

 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)にある、スポンサーを務める米食品大手ペプシコ(PepsiCo)のオフィスでインタビューに応じたボルト氏は「五輪が本当に恋しかった。あの場にいられればという感覚だった」と話し、「私はあのような瞬間のために生きているからね。だから見るのがつらかった」と続けた。

 陸上短距離の一時代を築いたボルト氏は五輪で計8個の金メダルを獲得。2008年に行われた北京五輪の男子400メートルリレーでも優勝を果たしたが、チームメートであるネスタ・カーター(Nesta Carter)氏のドーピング陽性が判明したため、このときの金メダルは剥奪となった。

 史上最速の男として知られるボルト氏が引退してから初めて迎えた五輪の男子100メートル決勝は、新型コロナウイルスの影響により無観客となった国立競技場(Japan National Stadium)で、ヤコブスが9秒80のタイムで優勝を果たすという地味な結末となった。

 ボルト氏は「引退するとき、私のコーチがあることを話してくれた。それは『みんなが速くなっているわけではなく、私が遅くなっている』というものだったが、そういうふうには一切思えなかった」と語った。

「多くの選手があまり速くはなっていないのだからそれは事実だ。これまで私が壁を突き破ってきて、その後はタイム面では後退したのだから、私にとって9秒80というのは可能なタイムだった」

 しかし、引退後にサッカーと音楽の世界に挑戦したボルト氏は、東京五輪での復帰を検討していた際は「全てはモチベーション次第」だったと明かした。

 3児の父になったボルト氏は「五輪に関しては違ったふうになっていただろう」と述べ、「五輪は最高のレベルだと思っているからいつも準備をしているが、陸上の世界ですでに全てのことを成し遂げていたから、全てはモチベーション次第だった」と続けた。

 さらにボルト氏は、自身が2009年に樹立し、その後ほとんど脅かされていない100メートルの9秒58と200メートルの19秒19という世界記録を破れそうな現役選手はいないと話した。

「今の世代で、記録を更新しそうな人はいないと個人的には思う」

「だから、誰かが実際に私の世界記録を更新するまであと数年かかると思う」 (c)AFP/Talek HARRIS