【11月27日 AFP】クリスマスをモチーフにしたセーターやスキー靴──。南米チリにあるアタカマ砂漠(Atacama Desert)には、こうした衣類が山のように捨てられ、非現実的な光景が広がっている。世界で最も乾燥しているといわれるこの砂漠を汚染しているのは、流行の服を大量生産して短いサイクルで販売する「ファストファッション」だ。

 アパレル業界を席巻する大量消費主義の社会的影響といえば、工場での児童労働や低賃金が知られるが、環境破壊について取り沙汰されることは少ない。

 中国やバングラデシュで作られ、欧州、アジア、米国で売れ残った衣料品や古着は長年、中南米諸国に再販売される際にいったん、チリに集められてきた。

 チリ北部アルトオスピシオ(Alto Hospicio)にあるイキケ(Iquique)の自由港(外国貨物に関税を課さない商港)には、年間約5万9000トンの衣料品が到着する。

 一部は、南に1800キロ離れた首都サンティアゴからやって来る衣料品業者に買い取られ、残る多くは他の中南米諸国に密輸出される。それでも売れ残り、アタカマ砂漠に廃棄された衣類は少なくとも3万9000トンに上っている。

 廃棄された衣料品から断熱パネルを生産する会社「エコフィブラ(EcoFibra)」を創業したフランクリン・セペダ(Franklin Zepeda)氏は、「問題は、こうした衣類が非生分解性で、化学製品が含まれることです。そのため、自治体の埋め立て地では受け入れていないのです」と指摘する。

 国連(UN)が2019年に発表した報告書によると、世界の衣料品生産量は2000年から2014年にかけて倍増した。また、世界で消費される水の20%は衣料品業界によるもので、ジーンズ1着を作るには7500リットルの水が必要だという。

 この報告書によると、衣類や靴の製造によって排出される温室効果ガスは世界全体の8%に上り、毎秒、ごみ収集車1台分の衣類が埋め立てられるか焼却されている。