【11月16日 AFP】ブルガリアの炭鉱でこれまで12年間、働いてきたニコライ・ディネフ(Nikolay Dinev)さん(34)は将来に不安を感じている。

 13日に閉幕した国連(UN)気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、欧州連合(EU)全域の石炭からの脱却について話し合われた。

「大変なことになる。(中略)閉鎖は避けられない」。炭鉱と火力発電所が集まるブルガリア中部のマリッツァ・イースト(Maritsa East)地区で、ディネフさんはAFPに語った。

 2007年にEUに加盟したブルガリアは、今も域内最貧国の一つであると同時に石炭依存国でもある。政府は石炭火力発電を廃止する期限の提示を長い間避けてきた。しかし10月にようやく、EU域内の新たな成長政策「欧州グリーンディール(European Green Deal)」の下で、2038年もしくは2040年を廃止予定期限として提示する方針を発表した。

 これに対し炭鉱関連の労働組合は首都ソフィアで抗議行動を展開し、約3万人が雇用されている石炭産業を救うよう政府に要求した。

 マリッツァ・イースト地区だけでも1万2000人が雇用され、ブルガリアの電気需要の3分の1以上を満たしている。露天掘り鉱山と石炭火力発電所は、何十年にもわたって同地区最大の収入源だ。

 当地の褐炭層は19世紀中期にフランスの地質学者が発見し、その後、ロシアの技術陣によって開発された。エネルギー省のデータによれば、まだ15億トンの石炭が眠っている。