【11月11日 AFP】米俳優アレック・ボールドウィン(Alec Baldwin)さんが主演映画『ラスト(Rust、原題)』の撮影中に銃を誤射し、撮影監督が死亡した事故で、撮影スタッフがボールドウィンさんを提訴した。原告代理人が10日、明らかにした。

 ロサンゼルスの裁判所に提出された訴状によると、照明責任者のサージ・スベトノイ(Serge Svetnoy)さんは、主演・プロデューサーのボールドウィンさん、デイブ・ホールズ(Dave Halls)助監督、武器担当責任者のハンナ・グティエレスリード(Hannah Gutierrez-Reed)さんを相手取り、事故は3人の「過失と怠慢によって起きた」と主張している。

 訴状は「端的に言って、問題の45口径コルト(Colt)製回転式拳銃に実弾を装填(そうてん)する必要も、『ラスト』の撮影現場に実弾が存在すべき理由もなかった。銃に実弾が装填されていたことで、近くにいた全員が命の脅威にさらされた」と指摘。ボールドウィンさんら3人は、武器の取り扱いに関する映画業界の慣習を守らず、「実弾を装填した拳銃を生きた人間に向けることを許した」としている。

 スベトノイさんは、10月21日の誤射事故で亡くなった撮影監督のハリーナ・ハッチンス(Halyna Hutchins)さんと多くの作品で撮影現場を共にしてきた。事故当時もハッチンスさんの近くにおり、銃弾がすぐそばを通り過ぎる「奇妙で恐ろしいシュッという音」を聞いた後、火薬と「残渣(ざんさ)」が顔に掛かったと述べている。

 訴状には、倒れたハッチンスさんを助けようと抱きかかえたスベトノイさんの手が血まみれになったことも記され、「その後の20~30分は原告にとって、人生の中で最も長い時間に感じられた」とつづられている。

 問題の銃の装填を担当したグティエレスリードさんは代理人を通じ、ハッチンスさんの死をめぐり「はめられた」と主張している。ただ、サンタフェ(Santa Fe)郡のメアリー・カーマックオルツイース(Mary Carmack-Altwies)地方検事は10日、ABCニュース(ABC News)に「証拠は何もない」と述べ、陰謀の可能性を否定した。(c)AFP