【11月14日 People’s Daily】科学調査船「雪竜2号(Xuelong-2)」はこのほど、上海市の中国極地科学観測埠頭(ふとう)に帰港し、1万4000カイリ(約2592万8000メートル)、79日間の風波の試練を乗り越え、中国第12次北極科学観測隊は無事に任務を完了した。

 今回の科学観測では、科学観測隊の邵剛(Shao Gang)氏と同僚3人が担当した自律型水中ロボット(AUV)「探索4500(Tansuo4500)」(以下、「探索4500」という)が見事な活躍を見せ、北極高緯度の海氷に覆われるエリアの科学観測に成功した。これは中国が初めてAUVを利用して北極の高緯度エリアで海底科学観測を応用したもので、潜水で得られた貴重なデータ資料から、北極の環境保護に重要な科学的な手がかりが得られる。

「探索4500」が極地に出るのは今回が初めてだ。瀋陽自動化研究所が開発を主導した「探索4500」は、外見が「フウセイ」に酷似しており、通常の無人水中ロボットより自律能力が優れている。

 同研究所の李陽(Li Yang)副研究員は、「遠隔制御型水中ロボット(ROV)に比べ、『探索4500』はケーブルがなく、母船と接続されていないため、手動介入なしに自律航行と探査が可能で、航続時間が長く、作業範囲も広い」と語った。

 今回の北極科学観測作業エリアの高密集度の海氷に覆われているという特徴に対し、研究チームは音響制御と自動誘導を融合した氷下回収技術を革新的に研究開発し、「探索4500」の連続潜水の成功と安全回収を確保した。邵氏は、「われわれはまた緊急ビーコンを追加し、潜水艇が浮上した後に氷の下にひっかかったり、肉眼で位置を確定できない時に、比較的正確な方向の定位を行うために使用する」と述べた。また、研究チームは「探索4500」の障害処理プロセスを最適化し、自らの現在の状態を判断し、意思決定を行うようにした。

「AUVは極地科学観測で主に3つのタスクを担う」。李氏は「一つは浮氷への観察と探査、その厚さ、状態および運動状況などを理解すること。第二に、水の深度、温度、塩分などを含む水系パラメータを測定する。第三に、海底地形の精密な探測を行い、その上で海底の鉱物資源を発見することができる」と述べた。

 従来の海氷観測の方法では、海氷に穴を開けてきたが、この方法は効率的ではなく、得られるデータも限られており、大きな限界があった。AUVは海氷の影響を受けず、人が到達できないエリアまで到達し、より広い範囲、より深い深度、より長い時間の科学観測を行うことができる。また、サンプリングが柔軟で正確であるため、サンプルの品質向上や、数の増加に役立つ。

「科学観測隊員は水中ロボットに取り付けられたビデオカメラ、カメラおよびイメージングソナーなどのイメージングデバイスを通じて、極地の水中世界を直感的に観察することができる」と、李氏は言った。

 近年、中国の大きな需要に対し、瀋陽自動化研究所は一貫して水中ロボットの系統化発展を推進してきた。現在、深さでは水面から水中まで1万1000メートルを完全にカバーし、航続距離でも数キロメートルから数千キロメートルを完全にカバーしている。李氏は「現在、中国の無人水中ロボットは主要な機能と性能指標において、国際的先進レベルに達している」と述べた。

 将来、世界のAUVは、よりインテリジェントな方向に発展し、より強い環境適応性と協同作業能力を備えるだろう。(c)People’s Daily/AFPBB News