【11月12日 東方新報】北京市の副都心・通州区(Tongzhou)で9月20日に開園した「ユニバ-サル・スタジオ・北京(Universal Studios Beijing、USB)」が中国で大人気だ。中国の文化・技術を大きく取り込み、市民のハートをつかんでいる。

 USBは、米国のロサンゼルスとフロリダ、大阪、シンガポールに続いてユニバーサル・スタジオの名を冠した施設。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの2倍の規模を誇り、7つのエリアに37のトラクションを備える。中国で興行成績が高い作品をテーマとし、「カンフー・パンダ(Kung Fu Panda)」と「トランスフォーマー(Transformers)」もエリアに選ばれている。入場料金は時期によって4段階に分かれて418~748元(約7377~約1万3201円)。年間来場者は1000万人以上を想定している。

 映画の聖地ハリウッドをテーマにしたエリア「ハリウッド・ブールバード」の目玉は、炎や水を使った迫力満点のショー「Lights Camera Action!」。映画界の巨匠、張芸謀(Zhang Yimou、チャン・イーモウ)監督とスティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督の共同演出で、ハリケーンが港を襲うシーンなどパニック映画の制作現場を再現している。

「ジュラシック・ワールド(Jurassic World)」エリアでは、作品の舞台となったヌブラル島をリアルに再現。中国の建設大手、中国建築第二工程局が「4D BIM」方式で建造したものだ。コンピューター上に現実と同じ建物の3次元モデル(BIM)を構築し、3次元モデルに建設工程の時間軸を持たせた4Dモデルで正確かつ時間のロスのない建造を実現した。このエリアでは、ジュラ紀の世界に飛び込んで恐竜に追いかけられるアトラクション「ダークライド」がスリリングで人気が高い。責任者の楊猛(Yang Meng)氏は「こうした没入型アトラクションはライドシステム、特殊映像、照明、音響すべての有機的な組み合わせが必要です」と話す。建造前はすべて米国仕様を求めていた米国側と交渉し、約1万6000台の照明器具の80%を中国製にするなどの独自色も出している。

「ハリー・ポッター(Harry Potter)」エリアは、ホグワーツ城やホグズミード村の世界が広がり、ローブをまとい、魔法の杖(つえ)を持った入場者が記念写真を撮っている。建造を担ったインフラ建設大手・中鉄建設によると、ホグズミード村には1600トンの鋼材と6600個の部品を使用。氷のつららが太陽の光でどのように光るかなど細部まで徹底に計算し、米国側のハリポタエリア責任者は「世界に4つあるハリー・ポッター・パークの中で、映画の世界を最も忠実に再現している」と称賛する。

「トランスフォーマー」エリアでは、主人公と科学者が地球を守るため北京に本部を置くという新しいストーリーを作り、「ミニオンズ(Minions)」エリアには、中国発祥の十二支とミニオンズを組み合わせたTシャツやバッグなどのオリジナルグッズ飛ぶように売れている。

「カンフー・パンダ」エリアは、主役のパンダ・ポーが住む「平和の谷」を再現し、中国で人気の武俠映画の雰囲気を醸し出している。レストラン「ガチョウのピンさんのヌードルハウス」では、お客さんは「俠客(きょうかく)」と呼ばれ、店員が「行抱拳礼(片方の手をグー、もう片方をパーにして手を合わせる)」のポーズで迎え入れる。メニューは本場のたんたん麺やワンタン麺、ギョーザを楽しめる。

 中国メディアによると、USBの株は中国企業が70%、米国企業が30%を保有している。USBにはホテルや商業施設も併設され、アジアでは初の大型リゾートタイプとしてオープンした。デザイン監督のディーン・オリオン(Dean Orion)氏は「USBは西洋と東洋の文化インスピレーションの結合であり、来場者は映画のスクリーンを飛び越えてキャラクターたちと出会える」と説明。USBを含むユニバーサル・北京・リゾート(Universal Beijing Resort)の管理会社の社長、トム・メアマン(Tom Mehrmann)氏は「設計・建設にあたっては、中国の消費者のニーズや文化的特性を取り入れることを目指した」と話す。

 10月の国慶節連休(1~7日)でUSBは上海ディズニーランドを抜いて最も人気のあるテーマパークとなり、国内旅行の人気都市ランキングで北京をトップに押し上げる要因となった。中国北部は故宮や万里の長城などの歴史名所はあるが、ディズニーランドのある上海や香港と比べて大型テーマパークの「空白地帯」だった。消費力旺盛な若者の人気を集めるため、USBは今後も最強の観光拠点となりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News