【11月7日 AFP】シンガポール政府がこのほど、ヘロインの密輸で死刑判決を受けた知的障害のあるマレーシア人の死刑執行を決めたことをめぐり、活動家から批判の声が上がっている。マレーシアの首都クアラルンプールでは5日、執行中止を求めるデモが行われた。

 ナゲントラン・K・ダマリンガム(Nagaenthran K. Dharmalingam)死刑囚(33)は2009年、ヘロイン43グラム(テーブルスプーン3杯ほどに相当)をシンガポールに密輸したとして逮捕され、翌年死刑判決が言い渡された。

 シンガポールは麻薬関連の法律が厳しいことで知られている。また、死刑制度を維持している。

 刑が予定通り10日に執行されれば、2019年以来の死刑執行となる。

 ナゲントラン死刑囚の支持者によると、同死刑囚のIQ(知能指数)は知的障害と認定される69で、犯行当時はアルコール依存の問題も抱えていた。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)の東南アジア研究員は、「薬物を携帯していただけで有罪となった人物を絞首刑にするのは卑劣だ。本人は裁判で何が行われているのかすら十分に理解していなかった可能性がある」と非難した。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は、知的障害者の死刑執行は国際法違反だと述べた。

 ナゲントラン死刑囚の姉サリミラさん(35)はマレーシア北部イポー(Ipoh)でAFPの取材に応じ、死刑執行の予定が決まったことに家族は「非常にショックを受けた」と語った。「到底受け入れられない」

 シンガポール内務省は、犯行当時ナゲントラン死刑囚には「精神異常」は認められず、「自身の行動をはっきりと理解していた」ことが裁判で明らかになったとしている。(c)AFP