【11月7日 AFP】西アフリカ・ニジェールの首都ニアメーのボクシングジムで、元国内ヘビー級チャンピオン、アブドゥル・アジズ・ウセイニ(Abdoul Aziz Ousseini)氏、通称アジズ氏は、路上で見いだした若者の指導に励んでいる。

 10人前後がグローブを手にはめてウオーミングアップを始める横では、ロープでつるされた大きなタイヤをアマチュアボクサーがパンチしている。

 もうすぐ50歳になるアジズ氏は、身長188センチ、体重は100キロを超える。国内ヘビー級タイトルを10度制した。

 ボクシングの魅力に目覚めたのは1998年。アフリカの半乾燥地域サヘル(Sahel)の中央に位置する貧困国ニジェールで、この格闘技が行われるようになったばかりの頃だ。元世界ヘビー級王者のマイク・タイソンMike Tyson)氏(米国)を手本として仰ぎ、引退後はボランティアで若者を指導する道を選んだ。

「この子たちはネグレクト(育児放棄)されていて、見境なく薬物に手を出していた。だから、土日には彼らのために時間を割くことにした」とアジズ氏は言う。

「町で強盗をやるようになるより、ボクシングを習った方がいいね」と、ジムで熱心にトレーニングをしていた一人は笑って話した。「後で人にも教えられる」

「この中からチャンピオンが生まれる」と、アジズ氏は自信たっぷりに断言した。

 ニジェール初のプロボクサーとなったアジズ氏は、国際的な成功を多少なりとも味わっている。

 フランス人のジャンマルク・ペロノ(Jean-Marc Perono)氏の指導の下、5戦連勝記録を残した。2人のフランス人元世界チャンピオン、アシン・シェリフィ(Hacine Cherifi)氏とファブリス・ティオゾ(Fabrice Tiozzo)氏のコーチもペロノ氏だった。

「崇拝するタイソンのように、私もリングを支配した!」と、アジズ氏は自身の金メダルを誇らしげに見せた。

「寄る年波には勝てず」、また恩師が他界して指導してくれる人もいなくなったとして、2019年に引退した。