【11月4日 AFP】世界最大のクジラ、ヒゲクジラ類の摂食量が従来考えられていたよりも最大で3倍多い可能性を示す研究結果が3日、発表された。ヒゲクジラ類の摂食行動は、生態系に極めて大きな恩恵をもたらすという。

 これまで地球上に生息したあらゆる生物の中で最大のヒゲクジラ類には、シロナガスクジラやザトウクジラが含まれる。ヒゲクジラ類は、海水からオキアミや小魚をこし取って食べる「ろ過摂食」という方法で餌を食べる。

 だが、体が巨大な上、絶滅の危機にひんしているために「一体どのくらいの量を食べるのか」という極めて基本的な疑問の答えが得にくかった。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、米スタンフォード大学(Stanford University)などの研究チームはこの問題を調査するために、動作センサーを備えた吸着カップ付きタグをクジラ321頭に装着し、摂食行動を観察。クジラのろ過摂食前と摂食後のオキアミの個体群密度を音波で測定した。

 その結果、摂餌期のシロナガスクジラ1頭は、1日当たり約16トンのオキアミを食べる可能性があることが明らかになった。

 論文著者であるスタンフォード大のマシュー・サボカ(Matthew Savoca)氏は、AFPに「この動物は飛行機くらいの大きさがあり、プール1杯分の海水を数秒でのみ込んでしまいます」と語る。

「できるだけたくさん食べながら、フルマラソンを3回走る。夏の摂餌期にはこれをほぼ毎日行うようなものです」とサボカ氏。「本当に信じ難いことです」

 研究では南極海(Southern Ocean)周辺で毎日測定された7種のクジラに関するデータを使用し、捕鯨が行われていなかった時代、クジラによるオキアミの年間摂取量は最大4億3000万トンに上った可能性があると推算した。これは現在、地球上に一度に存在するオキアミの推定量の2倍に相当する。