ヒゲクジラ類の摂食行動、海洋生態系に好循環もたらす 研究
このニュースをシェア
■ 「正のフィードバック」の循環
オキアミには重要な栄養素である鉄分が豊富に含まれる。オキアミを大量摂取するクジラの排せつ物は、その鉄分を生態系の他の生物、特に植物プランクトンに提供する役割を果たす。
植物プランクトンは極めて重要な微生物で、外洋の食物連鎖の基盤であるだけでなく、地球の酸素の大半を供給するとともに、重要な炭素吸収源でもある。
「クジラはオキアミをリサイクルする、極めて移動性の高い装置のようなものです。植物プランクトンが必要とする鉄分はオキアミに含まれていて、クジラの腸はその鉄分を解き放つ役割を果たしています」
この「正のフィードバック」の循環は、オキアミがクジラの減少に伴い、捕食者がいなくなって増えるどころか同じく減少しているのはなぜかという問いの答えになるかもしれない。
20世紀に南極海で捕獲されたヒゲクジラ類の数は約150万頭と推定されている。「シロナガスクジラの場合、全個体数の99%以上が捕獲されました」とサボカ氏は言う。「このような大きな圧力に耐えられる自然のシステムはありません」
今回の研究では、クジラの個体数が回復した場合にクジラが生み出す正のフィードバックが循環し、海洋生態系が回復する「緑の波」が起こる可能性があるとしている。(c)AFP/Natalie HANDEL