「女性マジシャン」と呼ばないで 米奇術界に立ちはだかる不平等
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【11月21日 AFP】米ハリウッドにある秘密めいた奇術の殿堂「マジックキャッスル(The Magic Castle)」。トランプマジック用のテーブルを前にして腰掛けたケイラ・ドレッシャー(Kayla Drescher)さん(31)は、憤慨した表情でうなずいた。「女性マジシャン」と呼ばれることについて質問した時だ。
「そうなんですよ。女性としてこの業界にいるのはどうなのかと聞かれることには、ものすごくうんざりしています」
「『女性マジシャン』なんて、まるでマジック業界の下位区分に入れられているみたい」と続けた。「イリュージョンではなく、比喩的な意味で『箱』の中に押し込められているみたいです」
マジシャンに対する一般人のステレオタイプのイメージは、男性マジシャンが女性アシスタントをノコギリで真っ二つにするというものだ。
現役のマジシャンのうち、女性はわずか7%。マジックキャッスルを本拠とし、奇術師やマジック愛好家が集まる会員制クラブ「アカデミー・オブ・マジカル・アーツ(Academy of Magical Arts)」の女性会員の割合もほぼ同じだ。
クラブをAFPが取材した夜、メインの出演者のうち女性はドレッシャーさんを含め2人だった。
ドレッシャーさんの奇想天外なカードマジックや巧みな手品に引き込まれている観客を見れば分かるように、マジック業界で女性は少数派かもしれないが、魅力的な存在であることに変わりはない。
7歳からマジックをしてきたドレッシャーさんは昔から気付いていた。マジック愛好家でも、ハロウィーンにワインを飲みながら大騒ぎで手品を楽しむ団体でも、「クロースアップ・マジック」を至近距離で見る客がマジシャンのジェンダー(性差)を気にすることはあまりない。
業界で女性の数が男性よりずっと少ないのは、マジシャンたちの「驚くほど旧態依然とした」考え方だとドレッシャーさんは指摘し、それに対して「声を上げ続ける」ことが重要だと思うと話す。