【11月14日 AFP】私たちが飲むコーヒーは将来、農園ではなくペトリ皿の中でできたものになっているかもしれない──。持続可能なコーヒーを目指して培養技術を開発した研究者は、こんな見通しを示している。

「これは正真正銘のコーヒーです。コーヒー以外のものは一切入っていません」。AFPの取材に応じた研究者のヘイコ・リッシャー(Heiko Rischer)氏は、薄茶色の粉が入った皿を指さした。

 リッシャー氏はフィンランド技術研究センター(VTT)で植物バイオ技術チームを率いている。世界中で愛飲されているコーヒーを大量生産するには環境問題が付き物だが、VTTが開発したコーヒーは問題の多くを回避できるという。

 このコーヒーは豆からひいたものではなく、バイオリアクター(生化学反応装置)の中で、温度や光と酸素の量を綿密に管理された上でコーヒーノキの細胞から培養されたものだ。

 焙煎(ばいせん)した粉からは、通常のコーヒーと全く同じ方法でコーヒーを入れることができる。

「コーヒーには生産品として問題があります」とリッシャー氏は言う。温暖化でコーヒー農園の生産性が低下し、農家は栽培面積を増やす必要に迫られ、これまで以上に広大な熱帯雨林の土地を開墾するようになる。

「輸送の問題もあります。化石燃料の使用も」とリッシャー氏は続けた。「ですから、代替品を探すことは全く理にかなっています」

 研究チームは、培養コーヒーを大量生産した場合の持続可能性について分析しているが、従来のコーヒーを育てるより労働力やリソースは少なくて済むとみている。

「すでに分かっているのは、例えば、水のフットプリント(生産から消費・廃棄までに使用される水量)は農地での栽培に必要な量よりはるかに少ないことです」とリッシャー氏は言う。