【11月13日 AFP】英スコットランド沖オークニー諸島(Orkney Islands)の小さな島に、冬の間の餌として海藻を食べるヒツジが数千匹生息している。このユニークな食性について科学者らは、地球温暖化の原因の一つである、メタンガスの排出削減に希望をもたらすものだと指摘している。

 海藻を食べるヒツジがいるのは、人口約60人のノースロナルドセー(North Ronaldsay)島。ターコイズブルーの海と岩だらけの浜に囲まれた、南北に5キロほど延びる小さな島だ。

 ノースロナルドセー島では19世紀初め、ヒツジが畑や道路に入るのを防ぐために大きな石壁が設けられた。それ以降、ヒツジたちは内陸部に進入できなくなり、海岸沿いで生きることを強いられるようになった。島の限られた土地を作物の栽培と牛の放牧に最大限利用するという意図が農民たちにはあった。

 すると、予想もしなかったことが起きた──ヒツジたちは夏には草にありつけるが、冬の間は海藻以外に食べるものがなくなったのだ。

 海藻を食べる哺乳動物は他にもいる。だが科学者らによると、数か月間、海藻だけを食べる動物はノースロナルドセー島のヒツジ以外にいないという。

 ヒツジや牛などの動物は、げっぷやおならでメタンガスを排出する。メタンガスは二酸化炭素(CO2)と比べ、大気中に熱を閉じ込める効果が約30倍高い。海藻食はヒツジの複雑な消化系に影響を与え、放出されるメタンガスの削減に寄与しているとみられる。

 地球環境が危機的な状況にある中、温室効果ガスの主要排出源の一つと指摘されている畜産業界にとって、ノースロナルドセー島のヒツジたちの食性は新たな可能性を開くカギになり得るとの見方も一部から出ている。(c)AFP/Veronique DUPONT with Stuart GRAHAM in Dundee