【11月1日 People’s Daily】月の火山活動はいつ止まったのか? かつてのマグマ活動はいかに維持されるのか?月の内部にはどのくらいの水があるのか? 中国科学院は10月19日、「嫦娥5号(Chang’e-5)」月面研究サンプルの最新研究成果を発表し、上記の問題に対する解答を発表した。研究によると、嫦娥5号の月サンプルは新種の月の海玄武岩で、月で最も「若い」玄武岩の年齢は20億年で、これまでの月サンプルに限定されていたマグマ活動期間より約8億年長くなった。後期マグマ活動の源エリアは放射性元素が少なく、月マントルの源エリアにはほとんど水がないという。

 2020年12月17日、嫦娥5号のサンプルモジュールが内モンゴル(Inner Mongolia)四子王旗への着陸に成功し、1731グラムの月サンプルを持ち帰った。これは中国が初めて地球外天体から回収したサンプルであり、人類が44年ぶりに新たに持ち帰った月サンプルでもある。

 これまでの月サンプルや地球上の月隕石(いんせき)の研究で、月の生命の特徴であるマグマ活動は少なくとも28億〜30億年前まで続き、古いマグマ噴火活動が残した黒い玄武岩が「月の海」を形成したことが確認されている。しかし、月の後期のマグマ活動の原因やマグマ活動が停止した正確な時期などについては、科学界で議論が続いている。

 今回の最新の研究で、科学研究者は超高空間分解能ウラン—鉛(U—Pb)年代測定技術を利用し、嫦娥5号の月サンプルである玄武岩の岩屑の中の50粒余りのウラン鉱物(バデレアイト、ジルコノライト、トランキリティアイト)を分析し、玄武岩の形成年齢が20.30±0.04億年で、月で最も「若い」玄武岩の年齢が20億年であることを確認した。つまり、月には20億年前までマグマ活動があり、従来の月サンプルに限定されていたマグマ活動よりも約8億年長くなっていたことになる。

「今回の嫦娥5号月サンプルの玄武岩の正確な年代学データは、衝突クレーター統計の年代曲線に重要なアンカーを提供し、内太陽系天体表面の衝突クレーター統計の年代測定精度を大幅に向上させる」と、中国科学院院士、地質地球所研究員の李献華(Li Xianhua)氏は述べた。

 李氏は「われわれが分析したところ、嫦娥5号月サンプルの特性はアポロ宇宙船の月サンプルとほぼ同じだが、粒度はさらに細かく、平均値は49.8マイクロメートルであることが分かった」と述べた。

 科学研究者はまた、嫦娥5号月サンプル中の玄武岩の鉄含有量が非常に高く、マグネシウム含有量が非常に低いことを発見した。これは全く新しいタイプで、同じマグマ噴火事件に由来する。

「これまで、月の歴史上、30億年前から10億年前の間にマグマ活動があったかどうか、火山噴火のデータ記録は全く空白だったが、中国科学者が発表した嫦娥5号の月サンプル研究がこの空白を埋めた」。米国カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)教授で、国際的に有名な同位体地球化学・宇宙化学者の尹慶柱(Yin Qingzhu)氏は、この重大な発見は太陽系惑星の表面のクレーター衝突の年齢の絶対的な標定と、月の熱の歴史の進化をさらに研究するためにも非常に重要な意義を持つとみなしている。

 中国科学院の周琪(Zhou Qi)副院長は「中国科学院も月サンプル研究の国際協力を積極的に推進しており、中国科学院とフランス科学研究センター(CNRS)は月サンプル協力分野で初歩的な合意に達した」と明らかにした。(c)People’s Daily/AFPBB News