■生物ポンプ

 プランクトンには植物プランクトン(いわゆる藻類)と動物プランクトン(極小動物や魚やカニなどの幼生)がいる。このうち植物プランクトンは光合成を行い、二酸化炭素(CO2)をエネルギーと酸素に変える。

 地球上の酸素の約半分は海洋で生成されていると科学者らは推定しているが、そのほとんどを担っているのは植物プランクトンだ。

 さらにプランクトンは海の「生物ポンプ」にとっても不可欠だ。生物ポンプとは大気中のCO2を海が吸収するメカニズムのことで、化石燃料の燃焼によって生じたCO2のうち少なくとも4分の1は生物ポンプによって海に取り込まれる。

 樹木は木の幹や葉に炭素を蓄えるが、植物プランクトンは体内に炭素を蓄える。蓄積された炭素は食物連鎖を通過する。植物プランクトンを食べた動物プランクトンは、鳥類からクジラまでさまざまな生き物の餌となる。死んだプランクトンや、その捕食生物が排出した炭素を含んだ有機物は海底に沈む。

 だが、科学者らは気候変動がこのシステムに負荷をかけていると警告する。海温が上昇し、海の深部から上層に養分が移動しにくくなり、海水を酸化させるCO2の量も増加しているという。

■わずかな減少でも影響は増幅

 植物プランクトンは比較的回復力が強く、海が温暖化すれば生息域を移動し続けるだろう。だが、国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は来年公表予定の報告で、海洋の状態がさらに悪化すれば、今世紀中に植物プランクトン全体の減少につながると予想している。

 植物プランクトンの生物量(バイオマス)の世界平均は、今後、温室効果ガス排出量のレベルに応じて1.8~6%減少すると予測されている。

 だが、プランクトンの重要度は非常に高く、わずかな減少でもその影響は「海洋食物網の中で増幅」し、最終的には約5~17%の海洋生物が減少するとIPCCは見ている。

 英国で始まった国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に世界の指導者が出席する中、海洋プランクトンの問題は、加速する人間活動の影響で複雑な生命維持システムが揺らいでいる事実を明白に指し示すものとなっている。(c)AFP/Kelly Macnamara