【11月1日 Xinhua News】中国の吉林大学を中心とする国内外の研究チームがこのほど、新たな研究成果を発表した。最先端の古生物ゲノム解析技術により、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のタリム盆地に住んでいた古代人の集団が、約9千年前にユーラシアステップの中・東部の広大な地域に幅広く存在していた古い遺伝子系譜を代表していたことが分かった。この集団は遺伝的に孤立していたが、外部との文化的交流は遮断されていなかった。

 ユーラシア大陸の奥地に位置する新疆ウイグル自治区は、ユーラシア文明の研究にとって重要な意味を持つ。中でもタリム盆地の小河墓地などの遺跡は、その独特の墓の形や文化的特徴から注目されている。研究者は、この地域で5千~3500年前の古代人の高品質ゲノムデータ取得に成功し、それをビッグデータのモデリング解析することで、後期更新世にユーラシアステップ中・東部の広大な地域に広範に存在した、古代北アジアと東アジアの成分からなる古い遺伝子系譜を発見した。計算によると、小河墓地の集団の祖先の成分は約9千年前に形成されていた。

 吉林大学生命科学学院、吉林大学辺疆考古研究センターの崔銀秋(Cui Yinqiu)教授によると、この系譜は青銅器時代のユーラシアステップに住んでいた集団や中央アジアのオアシス地帯の集団とは直接、遺伝的なつながりがなく、他のいかなる完新世のヒト集団と混合した形跡も見られない。この現象は、タリム盆地特有の砂漠環境が形成した自然の遺伝的障壁によって、この地域の古代人集団が長期にわたり遺伝的に隔離されていたことで生じた可能性がある。

 しかし、長期にわたる遺伝的隔離は、この地域と外界の文化・貿易交流を妨げなかった。研究者は、歯石から小河の集団が長期的に大量の乳製品を消費していたことを発見した。また、考古学調査では、墓の中からアワや小麦などの証拠が見つかった。

 崔氏は、この研究が新疆ウイグル自治区とユーラシアステップのヒト集団の進化過程に対する人々の認識を塗り替えるもので、古代から新疆がユーラシア大陸における多文化の交流と融合が共存する場所だったことを物語っていると説明。多元的要素が一体となった中華文化の、華麗で多彩な姿を示していると述べた。

  研究成果は27日、英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載された。(c)Xinhua News/AFPBB News