【10月29日 AFP】ブラジルの2020年の温室効果ガスの排出量が主に森林破壊の影響で9.5%増加したことが、28日公表の報告書で明らかになった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)中で排出量が減らなかった数少ない主要経済国の一つとなった。

 環境保護団体の連合組織である「ブラジル気候観測所(Brazilian Climate Observatory)」の報告書によると、新型コロナ感染対策の外出制限措置により各国で経済が打撃を受け、世界全体の2020年の排出量は7%減少した。一方、ブラジルの二酸化炭素(CO2)排出量は2006年以降で最高となる21億6000万トン相当に上った。

 報告書は「ブラジル国内、特にアマゾン(Amazon)熱帯雨林での森林伐採の拡大は、世界の潮流に逆行するものだ」と指摘している。

 ブラジルでは2019年に極右のジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)氏が大統領に就任して以降、農業・鉱業用の利用が制限されていた土地の開発が進められ、森林破壊が加速している。

 中南米最大の経済国であるブラジルでも昨年は他の国と同様、新型コロナの流行で工業生産や航空便が停止し、エネルギー部門による環境汚染は減少した。排出量は4.6%減と、2011年来の最低水準となった。

 しかし、それ以外の部門での排出量は大幅に増加し、減少分は相殺された。農業部門で2.5%、森林を伐採したり焼き払ったりするなど「土地の用途の変化」により23.7%増加した。

 排出量の増加は農業や放牧を目的としたこうした土地の開墾が主な原因で、世界最大の大豆・牛肉の生産・輸出国ブラジルにとって大きな問題となっている。

 ボルソナロ政権下で、ブラジル・アマゾンは1年間に1万平方キロ以上失われている。同氏就任前の10年間に消失した面積は年約6500平方キロだった。(c)AFP