【11月6日 AFP】死海(Dead Sea)に臨むイスラエルの観光都市、エンゲディ(Ein Gedi)。スパリゾートとして全盛期だった1960年代には、温水プールで汗を流した行楽客がそのまま塩辛い死海に滑り込んでいた。だが今、その岸辺は穴だらけになっている。

 東西を断崖に挟まれつつ、砂漠の中に壮大に広がる死海は60年代以降、表面積の3分の1を失った。毎年約1メートルずつ縮小しており、残されるのは、白く塩が吹いた陥没穴だらけの月面のような景色だ。

 深さ10メートルを優に超えるものもある穴は、死海が縮小しつつある証しだ。

 塩湖である死海では、湖水が減少すると地下に塩分が堆積する。だが、たびたび起きる鉄砲水が地下に浸透すると、堆積物中の塩の結晶部分が溶解する。すると土壌は支えを失って、崩壊してしまう。

 イスラエル地質調査所(Geological Survey of Israel)のイタイ・ガブリエリ(Ittai Gavrieli)氏によると、ヨルダン、イスラエルおよびパレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)の死海沿岸にできた陥没穴は、今や数千個を数えるという。

 これらの穴は、死海への水流をまさに途絶えさせた人間の活動を反映している。イスラエルとヨルダン両国は、農業用および飲用とするためにヨルダン川の水を迂回(うかい)させ、化学企業は死海の湖水からミネラルを抽出してきた。そこへ気候変動によって水の蒸発も加速している。

 死海は蒸発する運命なのか。科学者らは少なくとも今後100年間は水位の低下は免れないとみている。

 だが均衡状態に達する可能性もある。湖面が縮小し、水中の塩分濃度が上昇すれば、蒸発速度は遅くなるからだ。

 かつてエンゲディのスパで働いていた住民、アリソン・ロン(Alison Ron)さんは「こんなことを起こさせてしまったことを、私たちは恥じるべきだ」と語った。(c)AFP/Claire GOUNON