【10月28日 AFP】米ニューヨークのアート集団が、ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)のドローイング1000枚を1枚250ドル(約2万8000円)で販売した。ただし、2万ドル(約230万円)の価値がある本物は1枚だけで、残り999枚は精密な複製だという。

 販売したのは、ニューヨーク・ブルックリン(Brooklyn)を拠点とし、2016年に創設されたMSCHFプロダクト・スタジオ(MSCHF Product Studio)。MSCHFは、美術品や商業作品の再流用を専門とし、米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)のスニーカーを改造してミッドソールに人の血液が入っているように見える「サタン・シューズ(Satan Shoes)」を制作したことなどで知られる。

 MSCHFはウェブサイト「Museum of Forgeries(偽造品美術館)」で、ウォーホルがボールペンでスケッチした1954年の作品「Fairies(妖精)」を購入し、精密な複製を999枚制作して本物と交ぜたと説明している。

 1000枚は今月25日に1枚250ドルで販売され、完売した。MSCHFは複製について「Possibly Real Copy Of 'Fairies' by Andy Warhol(本物かもしれないアンディ・ウォーホルのFairies)」と題するアート作品だとしている。

 MSCHFは、複製を制作している動画をウェブサイトに投稿。ペンを持ったロボットアームが絵を描き、光と熱、圧力、湿気などでエイジング加工を施した後、スタッフがアンディ・ウォーホル美術財団(Andy Warhol Foundation for the Visual Arts)の印章を押し、鉛筆で注記を書き込む様子が捉えられている。

 MSCHFのメンバー、ケビン・ウィーズナー(Kevin Wiesner)氏は、AFPの質問に電子メールで回答。「美術品の保存や修復を行う専門家がすべての絵を並べて入念に調べれば、本物を見つけ出せると思う。でも、そのようなことは起きないだろう」と述べた。

 MSCHFによると、今回の試みの目的は、アート市場を支配している「真正性」や「排他性」といった概念に物申すことだという。

「私たちの目標は、信頼の連鎖を断ち切って作品を『破壊』することにある」とウィーズナー氏は主張している。

 AFPはウォーホル美術財団にもコメントを求めたが、回答は得られていない。(c)AFP