【10月28日 AFP】ナイジェリア北部カノ(Kano)州の宗教警察は26日、極貧状態から脱するために自身を売りに出していたアリュー・イドリス(Aliyu Idris)容疑者(26)を逮捕した。

 カノ州はイスラム教徒が多く、近代法とシャリア(イスラム法)が併存している。宗教警察は容疑者を逮捕した理由として、身売りはイスラム法では違法だと説明。「忌むべき行為」に出たのは貧困と無知が原因だとしている。

 容疑者は先週、2000万ナイラ(約550万円)の値札を手にして市内を歩き回った。写真がソーシャルメディアに投稿され、大きな話題となっていた。

 容疑者は報道陣に対し、「耐え難い貧しさ」のため自分を「売りに出している」と説明し、2000万ナイラのうち半分は両親に、200万ナイラ(約55万円)は身売りを取り仕切ってくれた人に渡すつもりだと話した。さらに、購入者の「忠実な下僕」になると約束していた。

 宗教警察は、ナイジェリア社会に極度の貧困が存在することは承知しているが、だからといって自分を売りに出す権利は誰にもないとして、「奴隷の時代は終わった」と述べている。

 ナイジェリアでは、食料品を中心にインフレ率が依然として高く、大半が1日2ドル(約230円)以下で生活している国民はこれまで以上に困窮した生活を強いられている。

 容疑者はカノ州に隣接するカドゥナ(Kaduna)州出身の仕立職人。宗教警察によると、村を出てカノまで仕事を探しにきたが、単純労働ですら全く見つからなかった。

 容疑者は現在も勾留されているが、訴追はされていない。精神鑑定によると正常で、カウンセリングを受けている。(c)AFP