【10月29日 People’s Daily】雲南省(Yunnan)昆明市(Kunming)郊外に位置する中国西南野生生物遺伝資源バンクは現在、中国で唯一の国家級野生生物遺伝資源バンクであり、国際基準に基づいて建設された二つの世界野生生物遺伝資源保存施設の一つでもある。

 生物多様性の保全において、遺伝資源の保護と利用は極めて重要だ。2004年、著名な植物学者で中国科学院院士である呉征鎰(Wu Zhengyi)教授の提案により、中国西南野生生物遺伝資源バンクの建設が開始され、2007年に運営が開始された。中国科学院と雲南省が共同で建設し、中国科学院昆明植物研究所が管理している。

 今年6月、同生物遺伝資源バンクは雲南省紅河ハニ族イ族自治州(Yunnan Honghe Hani and Yi Autonomous Prefecture)林業・草原局と共同で、蒙自市(Mengzi)周辺の複数の天坑に対し遺伝資源の調査と採集を行った。

 貴重な遺伝資源を保存するために、遺伝資源バンクの種子採集員たちは山を越え川を渡り目的物の植物を探し求め、さらに時間を計ってようやく要求に合った種子サンプルを採集することができる。遺伝資源バンクの基準によると、1点の完全な種子サンプルは少なくとも2500粒の種子が必要で、1万粒程度が最適だ。また、原産地の個体群の毀損(きそん)を避けるため、原産地の種子の20%以上の採集を禁止した。

 遺伝資源バンクへの入庫の「条件」は非常に高い。希少な絶滅危惧種、固有種および重要な経済、生態、学術研究の価値を有する植物の種子は優先的に保存される。種子の保存基準はさらに高い。計量、乾燥、クリーンなど、種子を遺伝資源バンクに輸送してから、入庫後の冷凍保存に至るまで、すべての作業の段階で完璧な技術標準規範に基づき、発生したデータはすべてタイムリーで正確にデータベースに入力しなければならない。

 「種子の活力を確保するため、5年や10年ごとに種子の活力検査を実施している」。遺伝資源バンク遺伝資源保存センターの蔡傑(Cai Jie)主任は、氷点下20度の恒温条件の下では、大部分の種子は数十年から数千年にわたっても生存可能だと説明した。

 遺伝資源バンクの運営開始以来、植物の種子は1万601種・8万5046点が保存されており、中国の有花植物種総数の36%を占めている。植物の種子のほかに、中国の重要な野生植物の離体材料やDNA材料、重要な動物の細胞株や重要な微生物株などの遺伝材料もある。

「植物種子の保存は中国の野生生物遺伝資源、特に中国固有種、希少な絶滅危惧種、および重要な経済、生態、学術研究の価値を持つ種の安全を強力に保障し、中国の野生生物遺伝資源の迅速かつ効率的な研究利用を可能にする」と、遺伝資源バンクの于富強(Yu Fuqiang)副主任は述べた。

 于副主任は、近年、遺伝資源バンクに保存されている豊富な遺伝資源に対し、ゲノミクスと分子生物学を主要研究手段とし、植物の進化、環境への適応と遺伝資源の保護と利用に関する科学課題を模索し、特殊環境の遺伝子の資源に狙いを定めて発掘し、遺伝資源の保存・利用の新技術を研究してきたと説明した。

 2017年、遺伝資源バンクに基づき建設された「国家重要野生植物遺伝資源共有サービスプラットフォーム」は、中国科学技術部と中国財政部によって中国初の28の国家科学技術資源共有サービスプラットフォームの一つに正式に指定された。2年後、同プラットフォームは「国家重要野生植物遺伝資源バンク」と名称を変更し、中国30の国家生物遺伝資源・実験材料資源バンクの一つとなっている。(c)People’s Daily/AFPBB News