【10月27日 AFP】2015年11月に起きたパリ同時襲撃事件の公判で26日、唯一の英国人犠牲者の姉が被告14人に対し「(自分と他の家族は)あなた方のしたことは非難するが、あなた方を憎まない」と語った。

 パリ同時襲撃事件では、3組の自爆犯と銃撃犯がバーやレストラン、コンサートホール「バタクラン(Bataclan)」を襲撃し、130人が死亡、約350人が負傷。イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出した。

 バタクランでコンサートを行っていた米ロックバンド、イーグルス・オブ・デス・メタル(Eagles of Death Metal)の物販を担当していた英国人のニック・アレクサンダー(Nick Alexander)さん(当時35)は銃弾を浴び、元交際相手の女性の腕の中で亡くなった。

 ニックさんの姉ゾーイ(Zoe Alexander)さん(48)は26日に証言台に立ち、弟は人を憎まないようにしていたとして「毒をもって毒を制すことはできない」と語った。

 さらに、ISの実行部隊10人の中で唯一生き残ったサラ・アブデスラム(Salah Abdeslam)被告(31)らに向けて「反省の言葉は期待しないが、ここで聞いた何かがあなた方の良心に響くことを願っている」と続けた。

 ゾーイさんによると、ニックさんは音楽を愛し群れることを好まず「長髪、スキニーデニムパンツ、ブーツ」というオルタナティブなスタイルで、故郷の基地の街コルチェスター(Colchester)の伝統にあらがっていた。

 ゾーイさんはニックさんの人生を「他人に命じられてあの夜、残虐行為を働いた人々が決して知り得ない本物の人生」と形容した。

 パリ同時襲撃事件の公判は、被告20人のうち14人が出廷し、残る6人は欠席裁判となっている。(c)AFP/Clare BYRNE