【10月27日 Xinhua News】中国科学院はこのほど、月探査機「嫦娥5号(Chang'e-5)」が回収した試料に関する最新の研究成果を発表した。月では約20億年前までマグマ活動が続いており、終盤の活動があったマントル源エリアは放射性発熱元素を多く含まず、非常に乾燥していたという。

 玄武岩質マグマの存在期間と地球化学的特性は、月の熱化学進化を理解するための鍵となる。これまでの研究では、月のマグマ活動は約28~30億年前までと考えられていたが、正確な時期については科学界で論争になっていた。

 今回の研究で、嫦娥5号の試料は米国や旧ソ連が持ち帰ったものとは異なるタイプの月の海の玄武岩であることが分かった。研究者らが岩片の中のウランを多く含む鉱物50個以上を分析した結果、玄武岩は約20億年前のマグマ活動でできたことが判明。月のマグマ活動がこれまで想定されていたより約8億年も長く続いていたことになる。

 最終盤のマグマ活動が起きた原因は長い間謎のままだったが、現在はマントル源エリアの放射性元素が熱源を提供していたか、マントルの水分で融点が下がったと考えられている。

 最新の研究によると、嫦娥5号の試料に含まれる玄武岩のマントル源はクリープ成分(カリウム・希土類元素・リン)の濃度が高くなかった。同成分は放射性発熱元素を多く含むことから、月のマントルに含まれる放射性発熱元素がこの玄武岩を形成した主要原因ではないことが証明された。

 研究チームは玄武岩の水分量と水素同位体組成を測定し、マントル源エリアの水分量が1グラム当たりわずか1~5マイクログラムで、非常に乾燥していることを発見した。これにより、月のマントルに含まれる水が融点を下げ、マグマ活動が長くなったという推測は排除された。

 一連の研究は、中国科学院地質・地球物理研究所と国家天文台の主導の下、複数の研究機関が共同で実施。成果は4本の論文にまとめられ、1本が中国の科学誌「ナショナル・サイエンス・レビュー(NSR)」、3本が英科学誌「ネイチャー」に掲載された。(c)Xinhua News/AFPBB News