■油田開発より悪影響?

 北海(North Sea)の油田開発による恩恵を受けてきた地元住民も、再生可能エネルギーへ転換する時期が来たと感じている。しかし疑問視されているプロジェクトもある。

 その一つが、英電力大手SSEの再生可能エネルギー子会社SSEリニューアブルズ(SSE Renewables)とシェトランド当局の提携事業として進められている巨大な風力発電基地「バイキング・ウインドファーム(Viking Wind Farm)」だ。

 2023年に操業を開始すれば、103基のタービンで、約47万6000世帯分の電力供給を賄うのに十分な低炭素エネルギーが生産される。

 同社によると、この風力発電プロジェクトによって毎年50万トンの二酸化炭素(CO2)排出を削減することができ、シェトランドの電力輸出は輸入を上回る見込みだ。

 しかし、多くの地元民は批判的で、建設計画に最初の許可が下りた2012年以来、法廷闘争が続いている。

 住民の一人、ドニー・モリソン(Donnie Morrison)さんは「初めから相応な規模の風力発電ならば、誰も反対しなかったと思います」と言う。「でも、あまりにも巨大で、ばかげています」。丘陵地帯にある自宅の周辺にはもうじき、ごう音を立てる風力タービンが設置されることになっている。

 反対派は北海の油田開発よりも、このウインドファームによる環境破壊の方が深刻だと警告する。

 観光ガイドのローリー・グッドラッド(Laurie Goodlad)さんは、この計画で、強力な炭素吸収源である泥炭地が大量に除去されてしまうと批判した。「彼らは基本的に、地球の肺を掘り起こしているのです」

 シェトランド諸島議会でエネルギー関連事業を統括するジョー・ナジダック(Joe Najduch)氏は、バイキング・ウインドファームのプロジェクトが世論を分断していることを認めつつ、こう主張する。「確かに、陸上風力発電所の建設計画でこの島にかなりの混乱が生じることも考えられますが、失うものよりは得るものの方が多いと思います」

 労働組合は、雇用創出の見通しがないことも問題だと言う。油田関連で豊富にある高賃金の仕事がすべて再生可能エネルギー分野へ置き換えられるとは考えにくい。

 それでも再生可能エネルギーに切り替えないと、結局は問題に突き当たるとナジダック氏は警告する。「シェトランドでもおおよそ2050年までには、石油もガスも枯渇するでしょう」

「(再生可能エネルギーを)開発しなければ、今よりも輸入に依存することになります」 (c)AFP/Veronique DUPONT