【10月27日 AFP】タイ・バンコクのバーやパブは、かつてのにぎわいを失い、7か月に及ぶ新型コロナウイルス感染対策の酒類提供禁止で大打撃を受けている。そんな中、あるバーのオーナーは生き残りをかけ、熱帯性のハーブを使ったフルーティーなモクテル(ノンアルコールカクテル)を創作、危機を乗り切ろうとしている。

 バンコクでは今年4月、高級ナイトクラブで新型コロナの集団感染が発生、政府は酒類提供を禁じた。それ以降に確認された感染者は約170万人に上る。

 政府の支援はなく、バーのオーナーは規則を無視するか創造的なアイデアで勝負するかの選択を迫られた。

 中華街のはずれにあるカクテルバー「ティーンズ・オブ・タイランド(Teens of Thailand)」。新型コロナの流行前にはジン好きが集まっていたが、今や棚のボトルにはほこりが積もっている。

 現在は収容人数を6割に抑え、新メニューとして鎮痛作用と軽い刺激効果がある「クラトム」を使ったモクテルを提供している。

 クラトムは東南アジアやパプアニューギニアで数百年にわたって薬草として使用されてきたもので、モルヒネと同様、脳の受容体を刺激するが、作用は弱い。タイでは主に深南部で、イスラム教徒の労働者らの間で肉体労働後の鎮痛剤として用いられている。同国では8月、合法化された。

 ティーンズ・オブ・タイランドのオーナーのニック・アヌマーンラーチャトン(Niks Anuman-Rajadhon)さんは、クラトム入りモクテルに命運をかけている。ただ、価格は1杯4ドル(約450円)と、11ドル(約1250円)だったジントニックの半分にも満たない。

 ニックさんはAFPに対し、「従業員に給料を払い、家賃を払うために他に選択肢はない」と話した。

 タイ酒類事業協会(TABBA)のタナゴーン・クプタジット(Thanakorn Kuptajit)会長は地元メディアに対し、酒類提供禁止により、90億ドル(約1兆円)あった市場規模は半分に落ち込むだろうとの予測を示した。

 プラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)首相が今月、一部観光客の受け入れを再開すると発表した他、政府は12月から酒類提供禁止を解除する方針を示している。