【10月30日 AFP】絶滅危惧種のフンボルトペンギンが生息する、チリ北部沖合の太平洋の群島は、他に類を見ない動物相を持つ「自然の宝庫」だ。しかし、本土の採掘プロジェクトによって、そのもろい生態系が脅かされていると環境活動家らは警鐘を鳴らす。

 25億ドル(約2800億円)が投じられる鉱物資源の採掘がもたらす経済的な恩恵と、気象災害が迫る地球を守る必要性との間で、チリ国内では議論が巻き起こっている。

 群島は8島から成り、うち3島は国の保護地区に指定されている。全世界のフンボルトペンギンの80%が生息する他、同じく絶滅の危機にある世界最小のカワウソの他、さまざまなアシカやバンドウイルカなどが生息する。

 カトリカ・デル・ノルテ大学(Catholic University of the North)で研究をしているカルロス・ゲイメル(Carlos Gaymer)氏は、ここは生物多様性の「宝庫」だとAFPに語った。「このような場所は地球上に二つとないと、世界中の科学者が認めています」

 事業は世界的に有名なガラパゴス諸島(Galapagos Islands)の近くで採掘を行うも同然の暴挙だとゲイメル氏は言う。

 採掘はドミンガ鉱山(Dominga Mine)で計画されている。首都サンティアゴの約530キロ北に位置するこの鉱山は、群島からはわずか30キロだ。鉱物を積み出す港の建設も計画されている。雇用創出の期待から、プロジェクトを支持する声もある。

■「文化の破壊」

 多くの現地住民にとっては、採掘事業は伝統的な生活様式を脅かすものだ。

 3代目の漁師で、潜水漁を行っているエリアス・バレーラ(Elias Barrera)さん(26)は「私たちが持つ豊かさとは物質的なものではなく、群島や島々の間を自由に行き来できることにあるのだと思います」と語った。

 地元プンタデチョロス(Punta de Choros)の住民は朝、目覚めると本土にある家々から群島を眺め、この地域で代々、持続可能な漁業を営んできた。

「ドミンガプロジェクトは先祖代々伝わる私たちの文化、先住民チャンゴ(Chango)の文化を破壊するものです。この地域で1万年にわたって環境と調和し、持続可能な形で生き残ってきた文化をです」とバレーラさんは言う。(c)AFP/Pablo COZZAGLIO / Alberto PEÑA