【11月2日 AFP】緑色のガウンを着た患者が何十人も順番を待っている。手術をする目の上の額には黒いマーク。インドで数百万人の視力を回復させた先駆的な医療サービスの恩恵を受けるところだ。

 米ファストフード大手マクドナルド(McDonald's)にヒントを得た効率的な流れ作業方式で、この眼科病院グループ「アラビンド・アイケア・システム(Aravind Eye Care System)」は年間約50万人に手術を行っている。多くは無料だ。

 世界保健機関(WHO)の「世界視力報告(World Vision Report)」によると、世界人口の4分の1強に当たる約22億人に視覚障害がある。そのうち10億人は未然に防ぐことができたか、あるいは治療を受けていなかった。

 インドには目の見えない人が推計1000万人いる。さらに5000万人に何らかの視覚障害があるが、その主な原因は白内障だ。

「こうした失明の大半は避けられるものです。多くの原因となっている白内障は、簡単な手術で容易に治せますから」。アラビンドの創立メンバーで手術部長のトゥラシラジ・ラビラ(Thulasiraj Ravilla)医師は語る。

 この病院を立ち上げたのは、ゴビンダッパ・ベンカタスワミー(Govindappa Venkataswamy)医師だ。マクドナルドのレイ・クロック(Ray Kroc)元CEOに触発され、米シカゴにある同社のハンバーガー大学(Hamburger University)を訪れてファストフードチェーンのスケールメリット(規模を大きくすることで得られる効果)を学んだ。

「マクドナルドがハンバーガーでできることを、目の治療でできないわけがあるだろうか」というベンカタスワミー医師の言葉はよく知られている。

 1976年、南部タミルナド(Tamil Nadu)州のマドゥライ(Madurai)市で11床の病院として開業したアラビンドはその後、インド各地で治療センターや地域クリニックとして広まった。