【10月21日 東方新報】中国の名門校・北京大学(Peking University)が、「北大」の名称を使っている福建省(Fujian)の学校に対し「名称の使用を許可していない」と校名変更を求めている。この学校は地元政府と企業が合同で設立したのだが、なぜ「パクり」のような騒動が起きたのか。

 問題となっているのは、福建省寧徳市(Ningde)蕉城区(jiaocheng)にある「寧徳北大培文学校」。蕉城区人民政府が「北京大学培文教育文化産業」という企業などとともに2016年からプロジェクトを始め、官民協力事業(PPP、Public Private Partnership)で設立した。学校の公式サイトによると、幼稚園、小学校、中学校、高校、国際部を備え、総費用は8億元(約144億円)、建築面積は16万平方メートルで、最大8000人が通学・通園できるという。小学1年生からバイリンガルコースもある。学校の理念として「愛国的、進歩的な北大の文化と、果敢に新しいものに挑む北大の精神を受け継ぐ」とうたっている。

 日本で東京大学(University of Tokyo)を「東大」と呼ぶことが多いように、中国で「北大」と言えば通常、北京大学を意味する。寧徳北大培文学校の中学校に子どもを通わせる保護者は「北大の質の高い教育が受けられると思って子どもを入学させました。1年間の学費は約3万3000元(約59万円)。今年の入学時は4万3100元(約77万円)になっています」と話す。

 北京大学は2018年3月に寧徳市教育局に「この学校に校名の使用を認めていない」と書簡を送付。今年8月に再び校名変更を求める書簡を送った。寧徳北大培文学校サイドは「学校経営に関わる北京大学培文教育文化産業は、北大傘下の企業である」として名称を使う権利があると主張したが、北京大学は「北京大学培文教育文化産業は大学の資産管理会社の傘下企業であり、大学直属機関ではない」と説明。中国で民間学校の義務教育に関する規定では「学校の名称に許可なく他の学校の名称や略称を含めてはならず、市民に誤解を与えるような曖昧さを生じさせてはならない」と定めている。トラブルを受けて、寧徳市政府も「早急に校名変更を検討するように」と要求。結局、寧徳北大培文学校の楊啓富(Yang Qifu)校長は「来年1月までに校名を変更する」と表明した。

 中国では近年、有名公立大学が地方政府や開発業者、投資会社と協力して学校を設置することが増えている。「政府や公立大学による民間学校」という独特のスタイルで、学費は公立学校より高く、年間10万元(約179万円)を超える学校もある。北京大学も中国全土の23省・市で学校を運営し、「北京大学付属」の名を冠した学校は数百校あるという。

 1人っ子が多い中国では保護者の教育熱が高く、子どもを有名学校に通わせるため引っ越すことは珍しくない。地方政府が有名大学の系列校を招致することは、成績優秀な子どもの「流出」防止につながる。大学や企業は学費から安定した収入が得られることになる。有名大学のブランド力を使った「看板ビジネス」と言われているが、一部の学校では優秀な教師の派遣や教育ノウハウの伝授がスムーズに行われず、「看板倒れ」が問題となっている。今回の校名使用騒動も過熱化する「看板ビジネス」のマイナス面が噴出した形と言える。(c)東方新報/AFPBB News