■「頭のねじが外れている」と住民に思われた

「土地を観察し続けていると、今、何が起きているのかが分かるようになりました」。絡み合った下生えを踏み締めて歩き回った後でプランケット氏は語った。「それが再野生化のプロジェクトになったのです」

 国連(UN)は今年6月、今後10年間で中国の国土面積に相当する地域を再野生化することを提言した。国連環境計画(UNEP)は、産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑えるという「パリ協定(Paris Agreement)」の目標を達成するには、土地の「劣化」を食い止めることが重要だと指摘している。

「私たちは、もっといろいろな手を尽くす必要があると思います。残念ながら、政府はやろうとしませんが」とプランケット氏は言う。

「自分であれこれ始めたのは、これ以上待てないからです」と話した。「アイデアを広めようとしているのです。効果があると実際に分かったアイデアです」

 2018年の世界銀行(World Bank)の統計によると、「エメラルドの島」として知られるアイルランドは、約65%が農地だ。

 プランケット氏が自身の農地を再野生化するのは容易ではなかった。地元では当初、一部の住民から「頭のねじが外れている」と思われた。

「非の打ちどころがない農地を私がめちゃめちゃにしていると思われていました」と振り返った。「単なる酔狂でやっているのだろうって」

 プランケット氏は、再野生化した所有地を「オアシス」と呼ぶ。シカ狩りは禁じており、夜が明けると、密猟が行われていないか土地を見回る。

「それなりの脅迫もありました。嫌がらせや破壊行為も。とても大変でした」と言う。

「いさかいも起きましたが、私たちは徐々に勝利に向かっています。実際、気候変動にはこうする必要がありますから」

 自身の所有地で生息している動植物の名前を列挙しながら、プランケット氏は自身の「小さな運動」にさらなる意欲を示した。

「毎年、少なくとも1種類の動物がまた姿を現すようになっています」と熱く語った。

「アイルランドに野生を取り戻しているのです。緑の大地として知られた国に」 (c)AFP/Joe STENSON